研究課題/領域番号 |
24610001
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
玉井 眞理子 信州大学, 医学部, 准教授 (80283274)
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キーワード | 生命倫理 / 学際的融合 / ゲノム / 出生前診断 / 国際研究者交流(アメリカ) |
研究概要 |
本研究の開始当初に暫定的に設定した3つのサブテーマ「ヒト胚」、「ゲノム」、そして「脳科学」のうち前二者を、「生まれ来ることをめぐる生命倫理」として統合し、「脳科学」に関しては、それを包摂するかたちで「生きられる体験としての生命倫理」としてそれぞれ改題して2年目の研究を行った。研究開始年度に国内外で行った情報収集および学際的研究者間ネットワーク構築をふまえ、研究開始2年目にあたり、国際出生前診断学会(2013年6月、リスボン)およびアメリカ人類遺伝学会(2013年10月、ボストン)に参加し、さらなる意見交換の機会を設けた。また、2012年度に引き続き、アメリカ・マサチューセッツ総合病院遺伝科のブライアン・スコトコー(Brian SKOTKO)氏を招聘し、日本人類遺伝学会第58回大会(2013(平成25) 年11月20日~23日、宮城県仙台市)での教育講演を企画し、関係者とのディスカッションの機会を設けるとともに、ダウン症の支援団体等との共催で一般市民との意見交換の機会をもった(2013年11月、東京)。スコトコー氏との国際連携に関しては、3年間の本研究課題継続中に少なくとも年に1回は来日して講演および意見交換をし、また研究代表者が年に1回程度は渡米して研究の打ち合わせを行うことにつき内諾を得ている。3年間の研究成果の一部を出版というかたちで世に問う試みとしての出版に関しては予定通り2014年度前半に刊行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始2年目にあたる本年度は、初年度の実績と反省を踏まえサブテーマを「生まれ来ることをめぐる生命倫理」と「生きられる体験としての生命倫理」との2つに絞って研究を行った。2013年6月にポルトガルのリスボンで行われた国際出生前診断学会(International Society of Prenatal Diagnosis)および「遺伝の心理学的側面に関するヨーロッパ・ミーティング(European Meeting on Psychosocial Aspects of Genetics 2013)」に、2013年10月にはアメリカのボストンで開催されたアメリカ人類遺伝学会(American Society of Human Genetics)に参加し、他の参加者らと意見交換を行った。「生まれ来ることをめぐる生命倫理」に関しては、2012年後半から新しいタイプの出生前診断技術(NIPT:非侵襲的出生前検査)が社会的にも大きな話題になったこととも関連し、全国各地で研究会を開催し、当該領域の研究者や関係する専門家のみならず一般市民を交えた貴重な意見交換の場をもつことができた。しかし、もうひとつのサブテーマ「生きられる体験としての生命倫理」に関しては、若干のヒアリングのみで、十分なディスカッションの機会を持つことができなかった。したがって研究全体の達成度としては「やや遅れている」と自己評価せざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の3年目となり同時に最終年度となる2014年度は、「生まれ来ることをめぐる生命倫理」と「生きられる体験としての生命倫理」との2つのサブテーマをひとまず継承しつつ研究を行う。「生まれ来ることをめぐる生命倫理」では、出生前検査/診断/スクリーニングの問題を扱う。「生きられる体験としての生命倫理」では、2013年度に行った若手研究への若干のヒアリング資料を活かし、「当事者体験」と「ケアの倫理」をキーワードとしてさらなるヒアリングと相互検討の機会を設ける。参加する予定の国際学会は、2013年6月にイタリアのミラノ開催されるヨーロッパ人類遺伝学会、および同年10月にアメリカのサンディエゴで開催されるアメリカ生命倫理学会である。また、一昨年、昨年に引き続き、ブライアン・スコトコー氏を招聘し、信州大学にて講演会(6月28日)、日本遺伝カウンセリング学会おいて市民公開シンポジウム(6月29日)を行う。研究成果の発表の機会としての出版に関しては、『出生前診断とわたしたち』(生活書院)の執筆がほぼ終了し、2014年6月には刊行される見込みである。さらに、「生きられる体験としての生命倫理」に関しては、2012年度にヒアリングの対象となり、本研究課題の研究協力者として今後あらたに参画依頼予定の若手研究者による論文集『(仮題)生きられる体験としての生命倫理』(出版社交渉中)の編集を企画中である。なお2つのサブテーマはさらなる改編の可能性もある。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費等の精算で差額が生じた。 2014年度の消耗品の購入にあてる。
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