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2012 年度 実施状況報告書

医学研究に関する新たな法的倫理的規範の構築のための比較法的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24610004
研究種目

基盤研究(C)

研究機関神戸大学

研究代表者

丸山 英二  神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10030636)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードインフォームド・コンセント / 個人情報保護 / 倫理審査委員会 / 疫学研究倫理指針 / 臨床研究倫理指針 / バイオバンク / 一般的同意
研究概要

平成24年度は,医学研究の被験者・試料等提供者のインフォームド・コンセント(IC),バイオバンク,データベース情報の活用,データの匿名性と個人情報保護などの問題を研究し,あわせて,アメリカのコモン・ルール改訂の動きを追跡した.加えて,24年12月から始まった疫学研究と臨床研究に関する倫理指針の改訂作業に関与することになった.
ICに関しては,わが国の医学研究におけるインフォームド・コンセントの状況を解説する英文原稿を,“Practice of Legal Medicine in Japan: Informed Consent in Research”として書き上げることができた(Springer-Verlag Berlin Heidelbergから刊行予定).そこでは,バイオバンクや診療で得られた試料等の研究利用や一般的同意のあり方に関して,倫理委員会の審査に加えてそのような試料等を用いた研究実施に関する情報提供の重要性を訴える持論を展開するとともに,わが国の制度を説明する中で,医学研究に関する倫理指針とGCPの内容および研究に関してICの要件の充足をめぐって争われた判決を英文で紹介した.
アメリカのコモン・ルール改訂の動きに関しては,24年10月の日本生命倫理学会総会で報告するため,あらためてその進捗状態を確認した.改訂提案の内容には,合理的で参考になるものが少なくない一方で,批判的な意見も少なくなく学ぶところが多かった.
疫学研究と臨床研究に関する倫理指針の改訂作業の関係では,これらの両指針について,適用範囲をはじめ両者の関係が分かりにくいという意見が多く,今回は両指針の統合が目指される.海外の事情が参照され現場の声が医療側からも患者側からも主張される改訂作業から学ぶところも多いが,こちらからもICと倫理審査を中心にできる限りの寄与をなしたいと考えている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1.わが国の医学研究におけるインフォームド・コンセントの状況を解説するとともに自らの主張・見解を提示する英文論文を書き上げることができた.そこでは,わが国における医学研究規制のあり方と研究におけるICをめぐった争われた愛知県がんセンター事件および金沢大学産婦人科事件について解説するとともに,既存の試料等を研究に用いる場合のあり方に関する持論を展開した.その内容の各々については,既に邦文で論文を書いた問題であるが,英文での執筆および海外の編集者とのやりとりにはそれなりの苦労や面白さがあった.校了には至っており(2013年2月),刊行されれば,幾ばくかの資料的価値があるのではないかと考えている.
2.米国におけるコモン・ルール改訂の動きのフォローは,インターネット上で開示されている膨大な量のパブコメを読み切るところまでは行っていないが,雑誌論文等における評価や下記の指針改訂のための専門委員会における他の委員による紹介などにより,情報を収集し検討を進めている.生命倫理学会での意見交換などにより多角的な見解を得ることができた.
3.バイオバンクや医療データベースを用いた研究のあり方に関しては,2012年11月の日本臨床薬理学会学術総会において報告の機会を与えられ,自身の見解を提示し,のちに活字化することができた(拙稿, バイオバンク・医療情報データベースと生命倫理と法, 2013, 臨床薬理44巻2号179-80頁).
4.疫学・臨床研究倫理指針の改訂専門委員会においては,ICや倫理審査に関するところを中心に発言した.電磁的方法によるICの記録など新たな問題に関しても問題提起を行った.
5.厚労省の「医療情報データベース基盤整備事業協力医療機関ワーキンググループ」に参考人として参加し,データベースを用いた研究のあり方について知見を得るとともに,法学の観点から意見を述べる機会があった.

今後の研究の推進方策

今年度以降,平成24年度の分析・検討を通して得られた知見・見解を,早めにとりまとめるとともに,アメリカの動きのフォローを継続し,あわせて,同様の作業を,カナダなどについても行いたい。さらに,この分野の難問である研究において偶発的に発見された対象者に対する危険の告知の問題と全塩基配列解析データの取扱いについて,生命倫理的・法的対応の検討を進める。具体的な作業としては,① 平成24年度の研究によって得られた知見のその後の変化をフォローするとともに,その成果を学会や研究会で報告したり,公刊したりすることに努める,② IC,倫理審査委員会および個人情報保護の問題に関して,国内外の状況把握にさらに努力を払った上で,その規制のあり方を検討する,③ 生命倫理規範について,多様な価値観に対応できる規範の可能性について,海外の状況を踏まえたうえで検討する,④ 上記の作業を経て,問題を整理し,解決の方向のあり方を探求し,現実に即した原則・基準の提示を目指す,ことが挙げられる。
なお,疫学研究および臨床研究に関する倫理指針の改訂専門委員会での改訂作業が進められていることに照らして,直接的には,同専門委員会において,両指針の望ましい統合のあり方,IC,倫理審査,個人情報保護などの問題に関してあるべき指針の内容について発言を続けていきたい。加えて,可能であれば,指針のあり方に関して検討する研究会を有志で開くことを提言したいと考えている。

次年度の研究費の使用計画

急速に発展・変化をとげる医学研究に関する情報収集のため,医学系学会に積極的に参加し,それを通して,医学研究の実情や医学研究に関する研究倫理指針が研究現場で果たしている機能などについて検討するための資料・材料を得ることに一層努力したいと考えている.そのため,年度に5~10回程度,日帰りまたは一泊で調査旅行をすることを予定し,それに基づいて調査・研究旅費を計上している。
また,インターネットを用いるものをはじめとして,情報の収集,整理,集約,論文やプレゼンテーション資料の作成・情報発信にパソコンおよびそのプログラムソフトウェアは不可欠のものになっており,その購入や使用料にあてる費用を計上している.
それ以外には,同種の研究を実施する際に一般的に必要とされる文献資料や文具等の購入にあてる費用支出項目を計上している.これらの項目に関しての積算根拠は,当初提出した研究計画調書の各費目の明細に示したところと基本的には変わっていない。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] アメリカ合衆国における臨床研究規制2012

    • 著者名/発表者名
      丸山英二
    • 雑誌名

      年報医事法学

      巻: 27号 ページ: 58~69

  • [雑誌論文] インフォームド・コンセントと法2012

    • 著者名/発表者名
      丸山英二
    • 雑誌名

      ICUとCCU

      巻: 36巻 ページ: 643~649

  • [雑誌論文] 医学研究と法2012

    • 著者名/発表者名
      丸山英二
    • 雑誌名

      笹栗俊之・武藤香織編『医学研究(シリーズ生命倫理学第15巻)』(丸善出版)

      巻: 15 ページ: 70~91

  • [雑誌論文] バイオバンク・医療情報データベースと生命倫理と法2012

    • 著者名/発表者名
      丸山英二
    • 雑誌名

      臨床薬理

      巻: 44巻2号 ページ: 179~180

  • [学会発表] バイオバンク・医療情報データベースと生命倫理と法2012

    • 著者名/発表者名
      丸山英二
    • 学会等名
      第33回日本臨床薬理学会学術総会
    • 発表場所
      沖縄コンベンションセンター
    • 年月日
      20121130-20121130
  • [学会発表] 米国コモン・ルール改訂に関する規則制定事前通知2012

    • 著者名/発表者名
      丸山英二
    • 学会等名
      日本生命倫理学会第24回年次大会
    • 発表場所
      立命館大学衣笠キャンパス
    • 年月日
      20121028-20121028
  • [学会発表] ゲノム解析技術の進歩と法と生命倫理2012

    • 著者名/発表者名
      丸山英二
    • 学会等名
      日本人類遺伝学会第57回大会
    • 発表場所
      京王プラザホテル
    • 年月日
      20121027-20121027

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公開日: 2014-07-24  

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