本研究では、非親族のドナーから報奨金と引き換えに腎提供を受ける生体腎移植プログラムが実施されているイランをフィールドとし、臓器移植をめぐる「分配的正義」の問題を、現地の価値観から理解することを目的とする。最終年度である平成26年度は、当初の予定では現地調査を実施しない計画であった。しかし、平成25年にビザ取得が困難でイラン渡航が遅延したため、平成26年度もイランで現地調査をおこなった。平成26年度に実施した内容は以下の通りである。細谷:4月~6月/11月にはイラン国内で次の方法により情報収集をおこなった。(1)臓器移植/透析治療/生殖補助医療/献血・輸血/患者団体の活動に関するペルシャ語文献・資料の収集、(2)移植情報センター、特殊疾患協会、イラン赤新月社、各種慢性疾患患者団体、生体腎移植プログラムに関わる機関・団体、生殖補助医療に関わる機関・団体等でのインタビュー調査、(3)ドナー・レシピエントを対象としたインタビュー調査。7月から3月は、主に文献研究と現地調査で得た情報の整理をおこなった。また、5月、8月、3月には、それぞれイラン、カナダ、イギリスで開催された国際学会・パネルディスカッションに参加し、イラン国内の医療従事者・国際的に活躍するイラン研究者から、情報の分析に関するアドバイスを受けた。さらに、1月からはオックスフォード大学にて、医療人類学・医療倫理・イラン研究の専門家と交流をもち、上半期におこなった現地調査のデータを分析する上で重要な視点を学んだ。松永:4月~3月まで、日本国内で各国の生殖補助医療に関する文献と資料を収集・読解した。7月、8月、12月、3月に細谷と検討会議をもち、現地調査のデータの分析について意見交換をおこない、議論を深めるための助言をおこなった。
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