研究課題/領域番号 |
24610010
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
村岡 潔 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (10309081)
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研究分担者 |
粟屋 剛 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20151194)
山下 登 岡山大学, 法務研究科, 教授 (90210418)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 医師の裁量権 / 患者の自己決定権 |
研究概要 |
本研究班は、第1回研究会(2012年6月28-29日;佛教大学二条キャンパス)でテーマ「医師の裁量と患者の自己決定」に関する現状分析を行ない、申請書に基づいて研究計画を確認した。ついで11月に第2回研究会を行なう予定であったが、諸般の事情で延期となり、3月9-10日に岡山県牛窓にて行なった。テーマは「生命倫理と法」における医師の裁量権と患者の自己決定権の位置づけについて3名が発表し他の識者・研究者5名と総合討論を行った。その結果、同一の医療過誤事例に関しても、医事法学的見解と医療倫理的見解の視点の違いや両者の推論とその論拠やアプローチの方法論違いが浮き彫りになった。その違いをどう分析し、両者間にどう架橋するかは次年度の課題とすることになった。なお、最初の1年目の成果については、論文(村岡 潔「医師の裁量権と患者の自己決定権:(1)両者は「医療過誤」にどうかかわっているか?」佛教大学保健医療技術学部論集、第7号、13-25頁2013年、(査読有))にて公刊した。また同テーマで第31回日本医学哲学・倫理学会(金沢大学、11月)でも村岡が発表した。初年度の結論としては、医療倫理・臨床倫理の戦略が、医師―患者関係(患者―医療者関係)のPEC モデルの中で両者の調和を図り、患者の自己決定権の行使を保障することであるように、また、医事法でも、医師の裁量(権)と患者の自己決定(権)の双方が相互に調整される場合を自律の原則が機能している形態と言えると評価した。また、医師―患者関係の不調和の調停には、これまでのような医事裁判経由ではなく、ADR(裁判外紛争解決手続き)を臨床にも採用することで相互の調整を図ることが有意義であると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)年3回計画していた研究会が2回開催でき、2回目は哲学・医学哲学・看護学・生命倫理などの複数の研究者を含めた検討・考察ができ、望ましい「医師の裁量権と患者の自己決定権の調和」の形成には、両者の法理と倫理理論のくいちがいというマクロ的側面と臨床の現場というミクロ的側面の両者の評価の違いを明確にする必要があることが判明した。 2)このことから、アンケートに使うケーススタディの中では、医事法理論の解釈と倫理理論解釈とを併記する必要があることが明確になったからである。
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今後の研究の推進方策 |
(1)第3回研究会開催(6月)今年度は、福岡県立大野病院医療事故などのようないくつかの「医療事故・医療過誤」について医師の裁量権と患者の自己決定権がどう作用したかを具体的に分析する予定を踏まえ、年次計画を立てる。また、後半は、医師の裁量権に関する社会調査(アンケート)の全体像及び細部を確定させる。(2)社会調査の実施(9月~10月):医師を含む医療関係者全般及び非医療関係者に対して医師の裁量(権)に関する社会調査(アンケート)を行う。(3)第4回研究会(及び岡山生命倫理研究会ミニ・シンポジウム)開催(11月)「岡山生命倫理研究会」(2002年設立、年3回開催)と連携し、ミニ・シンポジウムの形で行う。上記アンケート調査結果を踏まえ、これまでの研究成果を中間発表する。(4)第5回研究会開催2月に第5回研究会を開催する。この研究会では、これまでの研究成果(中間報告)を踏まえて次年度の研究成果発表の要点やプログラムについて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)医事法理論と臨床倫理理論とケーススタディのために文献(書物・雑誌類)を購入する。また、アンケート調査用紙の印刷費、郵送費、アンケート結果分析のために計算機ソフト(多変量解析用)およびその消耗品、アンケート搬送集計の人件費等に使用する。 2)京都並びに岡山での研究会開催のための旅費、東京等での資料収集のための旅費。 3)成果発表等の印刷費。 4)初年度予算の繰り越し分が出たのは、おもに研究会が一回延期になったために旅費が未使用となったこと、班員1名の生命倫理国際シンポジウム参加が2012年度は中止になったことによる。今年度は、釧路で開かれる同国際シンポジウムに3名が参加する予定であり、その旅費等に充当する予定である。
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