研究課題/領域番号 |
24611002
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
山本 信次 岩手大学, 農学部, 准教授 (80292176)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 資源管理 / 環境ガバナンス / 震災復興 / 持続可能な資源利用 / 地域性自然公園 / 里山的生態系 |
研究概要 |
国の名勝・県立自然公園である種差海岸は、震災・津波からの復興を目的に新設の三陸復興国立公園への編入が決定した。この編入が経済的・環境保全的側面から、地域にどのような影響を与えるかを検討するうえで本年は現地の資源管理の状況を正確に把握し、記録することに努めた。 我が国の自然公園は公的主体が所有権を持たず範域を指定する「地域制」故に、その管理には多様なステークホルダーの協働によるガバナンスの形成が不可欠であり、本研究の対象地である種差海岸は馬の放牧により形成された芝生草原などの里山的生態系を特徴とし、人為による植生管理が欠かせず、その実行には意思決定・費用負担などの環境ガバナンスが不可欠である。 以上のことから復興と環境保全を両立しうる自然公園における環境ガバナンスのあり方を解明することを目的とし、第一に「計画策定段階からの参画の必要性、各主体に求められる役割、費用分担、管理運営組織の育成の考え方」を明らかにするために、地域のステークホルダーへの聞き取り調査を重点的に実施した。その結果、対象地域では国の名勝指定を根拠に、管理方針を決意するための会議を八戸市教育委員会が主催し、ステークホルダーのラウンドテーブル会議が開催されていることが明らかとなった。予備調査を含めステークホルダーへの聞き取りを重点に調査を行った結果、詳細な現地の環境ガバナンスの有様を明らかにすることができたことから、共著書に事例として発表をした。 第二に本研究対象地のような地域性自然公園における持続可能な資源利用と住民参加によるガバナンス形成について学ぶべくドイツを訪問し、持続可能な地域資源利用とりわけ震災復興において注目されている再生可能エネルギー利用における住民参加と資源管理ガバナンス形成について事例調査をおこなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国の名勝・県立自然公園である種差海岸は、津波からの復興を目的に新設の三陸復興国立公園に編入されることとなったが、編入前時点における環境ガバナンスがいかに構築され、機能しているかについての把握はおおむねできたものと考えている。 詳細には対象地は馬の放牧により形成された芝生草原などの里山的生態系を特徴とし、人為による植生管理が欠かせず、その実行には意思決定・費用負担などの環境ガバナンスが不可欠であり、それが地域住民による牧畜的利用による外部経済効果として実施されてきた構造が崩壊し、保全目的そのものをずらしながら、あらたなステークホルダーとして観光関係者、環境保全に関心ある市民、林業関係者、行政などの多様な主体による管理に置き換えられてきたことを把握できた。以上のことから国立公園編入を控えた現地における環境ガバナンスのあり方を解明することは実現できたものといえるだろう しかしながら昨年度の時点ではいまだ流動的部分も多かった、国立公園編入後に起きうるであろう状況の変化あるいはその予測部分については、関係者もまだ情報不足であり、次年度以降の課題として持ち越すことになった。具体的には国立公園化が地域に何をもたらすのかについて、まだステークホルダーが明確なイメージを持てていないのが現状であり、今後事業の進展とともに聞き取りを継続する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
研究対象地の国立公園化は復興事業の中で急ピッチに進められたこともあり、昨年度時点では施設計画あるいは今後の運営などに関わって、いまだ不明確な部分が多く十分に把握することがかなわなかった。 今後は昨年までに把握しえた、国立公園編入「前」の環境ガバナンスがいかに変容していくか、あるいはそれに対してステークホルダー達が如何なるアクションやリアクションを起こしていこうとしているのかを把握するため重点的に聞き取りを行うこととなる。具体的には環境省・青森県・八戸市といった行政関連、地域の観光業者、環境保全NPO、松林管理を担当してきた森林組合などへの聞き取り調査の継続による環境ガバナンスの変容課程を跡付けていくことが大きな方向性といえるだろう。 また現地における地域資源利用は国立公園化による観光利用の強化にとどまらず、風力・バイオマス・太陽光などの再生可能エネルギー利用が復興事業との関係で求められてきており、こうした利用毎の相克あるいは共存をいかに図るかも重要な課題と考えられる。これらを現地で調査することに加え、先進地調査として海外調査を計測することとなる。今年度は再生可能エネルギー利用と市民参加ガバナンス形成について調査を行うことを念頭にオーストリアへの渡航を計画している
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|