研究課題/領域番号 |
24611011
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
直井 岳人 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (10341075)
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研究分担者 |
矢部 直人 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (10534068)
倉田 陽平 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (50585528)
十代田 朗 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (70226710)
飯島 祥二 琉球大学, 観光科学研究科, 教授 (80258201)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 歴史的町並み / 生活の様相 / 岐阜県高山市 / 岡山県倉敷市 / 旅行雑誌記事 / テキストマイニング |
研究概要 |
本研究は平成24年度から26年度までの3年間で歴史的町並みにおける地元の生活の様相に対する訪問客のまなざしとその生成システムを構造化することを目的としており、平成24年度は、「訪問客が歴史的町並みにおいて着目する地元の生活の様相」、「抽出した様相に対する訪問客の心理的評価の側面」、「訪問客と地元の生活との関わり方」の抽出と分類を、二次資料の内容分析を基に行った。また、具体的には、旅行雑誌に顕著に見られる歴史的町並みの要素の抽出を目的とし、日本の主要旅行雑誌2誌(「旅」、「旅の手帖」)に1965年以降掲載された、高山市と倉敷市の古い町並みに関する旅行雑誌記事の頻出語、語間の関係性、語と時代との関係性を、テキストマイニングソフトウエア(KH Coder Ver. 2.beta.23)を用いて分析した。分析では、頻出語の抽出、頻出語間の共起率(Jaccard係数)の算出、また、記事内容の時系列的変遷の分析を目的に、年代と頻出語間の対応分析を行った。頻出語の共起率の分析の結果、高山に関する記事においては、「歩く、朝市、家、入る」、「人、現代、過去」、「料理、味、食べる」、倉敷に関しては「伝建地区、町、白壁、歩く、旅館、博物館」が近接しており、2つの町並みが、歴史的事物としてだけではなく、人間の活動との関連や、その中を歩くという行為との関係の中で描かれていることとが示唆された。また、年代と頻出語間の対応分析の結果、高山に関しては80年代は伝統的要素、90年代は時代という語、2000年代は歩くという語が、倉敷に関しては、60,70年代は瓦、家々、工芸品などの伝統的要素、80年代は歩く、90年代は旅館、2000年代はガラスとの近接しており、建築的な要素からその他の要素への記事の視点の変遷が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初想定していた主要旅行雑誌の分析は終えており(読売旅行の高山、倉敷関連記事は広告主体であり、分析対象から除外した)、二次資料の分析作業自体は順調であった。なお、Webサイト上の旅行記(ブログ)に関しては、試行的分析の結果、分析の対象外とした。具体的には、旅行記に特化した主なブログサイトでは、高山及び倉敷の古い町並みという特殊な記事を絞り込むのに適したカテゴリーが設定されておらず、記事検索の際に考えられるキーワードも(表記の仕方を含め)多様であり、妥当性のある記事の抽出が困難と判断された。調査結果に関しては、期待された全ての成果が達成されたわけではなかった。具体的には、「訪問客が歴史的町並みにおいて着目する地元の生活の様相」に関しては一定の成果を得ることができたが、「訪問客と地元の生活との関わり方」に関しては、その重要性を示唆する結果は得られたものの、具体的な関わり方の抽出には至らなかった。また、「抽出した様相に対する訪問客の心理的評価の側面」については、古さと審美性を評価する数語以外は顕著な語は抽出されなかった。これは、データ収集分析方法の問題というよりは、観光旅行あるいは旅行記の専門家の視点で、比較的洗練された文体で書かれているという、旅行記の特性によるものだと考えられる。つまり、作業は予定通り進んだが、想定された結果が得られないという状況であり、次年度の調査において、この点を補完することが求められる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に抽出した「地元の生活の様相」、「評価」、「地元の生活の様相との接触モード」を尋ねる定量的質問票調査を、伝建地区の訪問客に対して行うのが平成25年度の調査予定であり、高山市での調査を予定している。当初は、3要因の関係性が分析対象であったが、前年度の「評価」、「地元の生活の様相との接触モード」の抽出が十分でなかったことから、これらについては、先行研究を基に尺度化する。また、要因間の関係性を検証しやすいという定量的手法の利点を生かし、訪問客が注目する地元の生活の様相に影響を与える要因(訪問経験、訪問動機との関係)と様相への注目の効果(満たされた欲求と町並みの印象)を明らかにすることを目的とする。調査では、7月頃の2-3日間を使い、訪問客1,000人程度を対象に、4名程度の調査スタッフにより、質問票の配布し、料金受取人郵便制度を利用した返信による回収を予定している。分析は秋季に集中して行い、年度末、あるいは次年度初めに成果の投稿を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
必要な研究費の執行の結果、前年度は執行額が当初の見込み額と異なっているが、前述の通り、研究計画自体には大きな変更はなく、今年度も計画通りに研究を進める。繰り越し額に関しては、分析対象として地方での収集を予定していた一部資料の関東圏内で収集可能となり、旅費や人件費を計画より抑えることができたことと、購入を計画していた物品(地図、観光統計情報)を平成25年度に購入することになったため生じている。平成25年度は、「古い町並みでの質問票調査のスタッフ宿泊費、交通費、人件費、手当」、「質問票準備費用(主に印刷費質問票)、「返信用郵便代」、「返信用封筒印刷代」、「データ分析スタッフ人件費」が主な研究費使用予定費目であり、当初の計画からの大きな変更はない。調査は、スタッフ6-7名、2泊3日での実施を予定している。なお、申請時の計画では高山市と倉敷市で調査を実施する予定であったが、予算上、また共同研究者のスケジュール上の事由により、一都市での実施を予定している。また、前述のとおり、質問票では先行研究をベースに作成した尺度を使用する予定であるが、関連する先行研究の多くが高山市で実施されているため、高山市での調査の実施を予定している。前述以外では、研究成果投稿に係る費用を本研究費より捻出する予定である。
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