研究課題/領域番号 |
24611020
|
研究機関 | 東京成徳大学 |
研究代表者 |
臺 純子 東京成徳大学, 人文学部, 准教授 (40440193)
|
研究分担者 |
韓 志昊 立教大学, 観光学部, 准教授 (40409545)
崔 錦珍 九州国際大学, 国際関係学部, 准教授 (50551959)
|
キーワード | 映像メディア誘発型 / 国際観光 / ロケ地めぐり旅行 / 日本人ファン / 韓国人観光客 / ファンダム |
研究概要 |
本研究は、映像メディアに誘発される国際観光における観光者特性と国際観光市場に与える影響を明らかにすることを目的としている。平成24年度に実施した聞き取り調査や予備調査の結果から、主演俳優の日本人女性ファンが、韓国ドラマ『アイリス』の撮影中から秋田を訪れ、韓国人観光客は、ドラマ放映後に、年末・年始の家族やカップルの旅行先として「秋田」を選んだことが分かった。(韓 志昊・臺 純子・崔 錦珍(2014)Who Are The Tousrists Motivated by the Korean? 立教大学観光学部紀要 No.16、pp.132-135.) そこで、まず日本人女性ファンの行動特性を明らかにするため、聞き取りや予備調査の自由記述をもとに、キーワードを作成し、KJ法を使って、いくつかのグループに整理した。このグループ分けに基づいて、観光者特性を測るため、7段階のSD法による本調査項目を組み立てた。平成26年2月から3月にかけて開催された『アイリス』主演俳優のファンミーティング時などに、調査票を配布、回収した。その結果の整理と詳細な分析は、平成26年度に実施するが、観光庁のHPでも紹介された「アイリス効果」はたしかにドラマ『アイリス』によって韓国から秋田を訪れた韓国人観光客が急増したことを指すかもしれないが、撮影中から日本人ファンが秋田に詰めかけたのは、『アイリス』に主演した俳優による効果というべきだということが分かってきている。そして日本人ファンは、撮影期間中はもちろんのこと、韓国での放送から4年以上が過ぎた今でも、秋田旅行の際には、ロケ地をめぐっている。これらのことを考えれば、観光庁がドラマや映画のロケ誘致を観光振興策として位置づけようとしている今日、ファンが多い俳優が出演しているかどうかも、誘致作品を選ぶ際の有力な基準となるかもしれないことを示唆しているといえる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年9月から10月にかけて、秋田県JR田沢湖駅に開設されているアイリスミュージアムの協力を得て、来場者への予備調査を実施し、120通ほどの調査票を回収した。この結果から『アイリス』をきっかけとしたロケ地めぐり旅行の核を担っているのは、やはり主演俳優の日本人ファンであると分かった。さらにファンブログの記述などを検討した結果、放送後、4年を過ぎた現在でも、秋田旅行の際には、ロケ地をまわっており、『アイリス』をきっかけとしたロケ地めぐり旅行の構造を明らかにするためには、ファンを対象とした調査が必要と判断し、多くのファンが集まる主演俳優のファンミーティング時に、本調査を配布し、約150通ほどの調査票を回収した。この結果の整理と分析は、平成26年度早々開始し、英語での論文投稿の準備を進めている。 またファンへの聞き取り調査から予備調査、さらには本調査項目決定までの経緯と手順、それぞれの段階で明らかになったことについては、日本語での論文投稿の準備を進めている。 しかしながら、同じくアイリスミュージアムに来場した韓国人向けに、韓国語の調査票を用意したが、前年同時期の韓国人入場者数(250人弱)と比べると、来場者が大幅に減少(約100人)したこともあって、調査票の回収は10通弱にとどまった。同時並行で、研究メンバー各自のネットワークを使い、調査対象者を探したが、聞き取り調査を実施できたのは2組であった。 韓国からの『アイリス』公式ツアーを企画した旅行会社、韓国ツアー客を多く受け入れた田沢湖周辺のホテルなどにも、調査対象者への聞き取り調査などの協力を依頼したが、残念ながら、顧客情報ということもあり、協力が得られなかった。韓国のブログなども引き続きチェックしているが、『アイリス』をきっかけに韓国から秋田に来た人を探す作業は難航しており、韓国のファンクラブなどへの依頼を計画している。
|
今後の研究の推進方策 |
ドラマをきっかけに秋田旅行をした韓国人観光客に対する聞き取り調査は、残念ながら難航し、研究メンバーのネットワークを使って、対象者を探し続けてきたが、現時点で聞き取りできたのは2組に過ぎない。韓国から秋田へのツアーを催行した旅行会社やツアーで主な宿泊先となったホテルに、調査協力を依頼したが実現できず、また秋田への旅行記を掲載している韓国のブログなども見つけることができなかった。しかし研究最終年度にあたる平成26年度には、韓国=秋田間を運行する航空会社や、韓国のファンクラブ、韓国観光公社などに調査協力を依頼し、ドラマをきっかけにした韓国から秋田への観光者への聞き取り、あるいは質問紙調査が実施できるよう、準備を進める。こうした調査実施にかかる経費などをかんがみて、海外での学会発表よりも、内外の論文投稿に力を入れることにした。 「現在までの達成度」にも記載したように、『アイリス』をきっかけに秋田を訪れた観光客の核である日本人ファンを対象に実施した本調査の結果は、英語での論文投稿を準備している。詳細な分析はこれからだが、ファンになったことで、さまざまな意味で世界が広がったと認識していることなどが整理できている。 秋田でのロケ受入れ機関や施設を対象とした聞き取り調査、日本人ファンへの聞き取り調査及び予備調査、アイリスミュージアムでの日本人ファンおよびドラマファンへの予備調査の整理結果と本調査項目の選定などの経緯と手順は、日本語での論文投稿を進めている。また日本人ファンが、韓国インバウンド市場に与える影響について、韓国語での論文投稿を目指して、メンバーと議論中であり、観光人観光客についての一定程度の調査結果が得られれば、その結果も加え、日韓のメディア誘発型観光者の特性比較の材料とすることができると考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた大きな理由は、予定していた人件費・謝金が発生していないことによる。当初、聞き取り調査での謝金などを想定して計上していたが、現時点では、当該の費目での支出がなく、平成26年度においても、使用しない可能性が高くなった。 「今後の研究推進方策」でも記載したが、『アイリス』をきっかけに韓国から秋田を訪れた韓国人観光客を対象とした聞き取り調査、質問紙調査などに傾注するため、次年度使用額は、調査にかかる経費に充当する。 また平成26年度交付予定額の120万円の直接経費のうち、多くを旅費が占めている。当初は海外学会での発表のための旅費として想定していたが、ソウル=秋田間を運航する大韓航空や、韓国ファンクラブへなどへの聞き取りあるいは質問紙調査を実施する際の旅費にあてる予定である。
|