研究課題/領域番号 |
24611029
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
今西 珠美 流通科学大学, サービス産業学部, 教授 (70319896)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 経営学 / 観光学 / 国際 / 旅行 / 企業 / 海外進出 / グローバル化 / M&A |
研究実績の概要 |
本研究課題「旅行産業の国際経営」は、人々の文化的背景が企業行動に影響を与えるサービス産業のグローバル化の可能性と発展過程を明らかにしようとするものである。具体的には、日本の旅行企業の海外展開を取り上げ、自民族中心のエスニックな国際経営行動の変化を明らかにする。①対象市場、②経営様式、③サービス、④競合企業、⑤現地市場開拓の5項目に着目して実態調査を行い、地域比較を通じて経営行動の全体的特徴と地域的特徴についても区別して捉えようとする。研究計画全体は、事前調査、国内調査、海外調査、事例の統合と結論の導出の4段階を踏む。3年目の本年度は、JTBグループの欧州事業について現地調査を実施した。研究結果は次のとおりである。 欧州事業は、地域統括本社を核にインハウス、インバウンド、アウトバウンドの3事業ユニットが各々の役割を果たすべく事業を展開する。インハウス事業は、本国グループ企業からの送客受入を担い、既存拠点が担当する。インバウント事業は、インハウス以外の送客受入を担い、M&Aによりグループに加わった欧州企業が担当する。アウトバウンド事業は、現地からの送客を担い、既存拠点およびM&Aにより傘下となった日系企業・欧州企業が担当する。 3事業は対象市場を異にするが、総体で日本人と非日本人をカバーする。自民族市場への特化から他民族を含む複数市場へのアプローチが始まり、M&Aを通じて非日本人市場対応と多国籍人材を内部化した。着地事業拡充による旅行需要の取り込みも図る。 欧州事業は、人気デスティネーションとしての立地優位性を活かし、旅客受入事業を主軸とする。自民族市場を重要視するが、非日本人市場開拓に挑むとともに、企業の基本姿勢として多国籍人材を取り込み、グローバル経営の学習機会を得る。エスニックな国際経営行動からセミ・エスニックへの移行がみられ、市場よりも企業戦略がグローバル化を推進する事例を捉えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は海外現地調査に取り組み、過年度の遅れをやや取り戻すことができた。しかし、調査事実が多岐に及び、複雑性を有したことから、調査結果の整理と分析、研究成果作成に予想以上に時間を費やした。そのため、過年度までの遅れを全て取り戻すには至らなかった。だが、本年度の研究を通じてポイントが把握できた。次年度は拍車をかけて研究を前進できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究協力を得て既に国内外で調査を実施している企業を中心に、調査地域の拡大を図る。調査実施に向け協力企業と調整を行い、未着手地域における現地調査を進める。 現地調査では、継続して重点5項目、①対象市場、②経営様式、③サービス、④競合企業、⑤現地市場開拓(現地発ビジネス)の調査を行う。調査地域は、アジア(例えば、韓国、台湾、香港、シンガポール)、米州(例えば、アメリカ)を予定している。可能ならば、欧州(例えば、スペイン、イギリス、オランダ、スカンジナビア諸国)にて再調査を行い、前回調査の不足を補いたい。ただし、先の地域に限定せず、協力企業が推薦する対象を取り上げたい。現地調査の実施は、協力先と調整がついた地域から順次、着手する。尚、現地の情勢により渡航が危険あるいは困難と判断される場合には、調査地の変更を行う。 現地調査では、できる限り日本人・非日本人にヒアリングを行い、双方の声を研究に取り入れる。また、現地調査に重点を置くが、事前調査、国内調査も行う。事前調査では、資料・文献を利用して丹念に下調べを行う。国内調査では、調査対象地にて勤務経験をもつ人物に現地経営の実態についてヒアリングを行い、現地調査前の備え、または実施後の追加調査としたい。 現地調査の結果は、地域単位の事例研究として取りまとめ、次にそれらを統合する。地域比較を通じて、日本の旅行企業の国際経営行動の地域的特徴と全体的特徴を明確にし、全体的特徴の変化、およびグローバル化の可能性と方法を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の実支出額は交付決定額に近似する。2年目までに生じた研究の遅れが次年度使用額に引き継がれた。未使用額の主な発生理由は、購入予定資料の未発刊、国内調査の実施不足、現地調査の実施遅れ(未着手地域の残存)である。計上できなかった、しなかった支出もあり、実際の使用額は収支状況に記載の実支出額を上回る。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は過年度までの研究の遅れを取り戻すべく研究に邁進する。これまでに実施不足であった国内調査および未着手地域での海外調査に積極的に取り組む。それゆえ、本年度の未使用額は、次年度の国内調査旅費および海外調査旅費として必要になる。円安傾向の持続、消費税増税、物価上昇に伴い、研究計画作成後、国内・海外の旅費、文献・消耗品購入のための物品費は上昇した。統計データの有料化も進む。継続して経費削減に努め、費用上昇と付加費発生に対処するが、必要に応じて過年度の未使用額を充填する。
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