研究課題/領域番号 |
24611032
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 久留米工業大学 |
研究代表者 |
大森 洋子 久留米工業大学, 工学部, 教授 (30290828)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ツーリズム開発 / 地域景観 / 無形遺産 / 文化遺産 / 地域社会システム / 伝統家屋 |
研究概要 |
この研究では地域の個性的な景観を保全しつつそれを観光資源としてツーリズムに活かした持続可能な地域開発型まちづくりの条件を明らかにするために、A)景観の把握、B)地域の社会システムに関する分析を現地踏査により行い、その成果を用いて、C)景観を保全しながらのツーリズム開発の方針検討を行う。24年度は以下の課題について調査・分析を行った。 A)景観の把握:地域の景観を把握し価値付けをするために、歴史的評価、景観評価、地域社会評価、無形遺産評価に関する調査を行い、その結果から景観の総合的評価を行い地域景観の価値を明確化する。対象地域の3地区では無形遺産評価以外はほぼ終了しているので、無形遺産評価に関する調査を実施した。具体的には、地域の伝統行事や祭り、伝統産業に関して、現地踏査と文献調査、当該者へのヒアリング調査により実態を把握した。ただ、調査開始した時点で終了している祭については、次年度に実施することにした。また、北川内の景観調査の内、伝統様式の納屋や土蔵に関する調査が不足していたので24年度にそれぞれ1棟ずつ建築実測調査を行い、土蔵と納屋の特徴を明らかにし、農家住宅の敷地内の配置について一定の秩序があることを明らかにした。 B)地域の社会システムに関する分析:有形・無形の遺産の総体として成立している景観を保全しながらツーリズム開発を行うために、技術的分析、無形遺産維持分析、ツーリズム分析を行う必要がある。技術的分析は大工や左官へのヒアリングを実施し、後継者不足の現状などが明らかになった。無形遺産分析については、無形遺産に関わる人や組織へのヒアリング調査を実施し、無形遺産を維持する組織が変化していることが明らかになった。ツーリズム分析は次年度行う予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究対象地である八女市黒木、同北川内、日田市豆田は24年7月に起きた九州北部豪雨災害の最も甚大な被害を受けた地区である。八女市黒木では14日未明に時間降水量94 mm、14日昼に24時間降水量486 mm、4日間の総雨量は649 mmを観測するなど記録的豪雨で、各地で床下浸水や崖崩れが発生し、その後は復旧作業が急がれている状況で、特に被害が甚大であった北川内では計画していたヒアリング調査が延期なる等景観資源把握調査と無形遺産調査が予定通りに進まなかった。25年度に遅れていた調査を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はB)地域の社会システムに関する分析の内、ツーリズム分析を行い、ツーリズム開発の課題を明らかにする。C)景観を保全しながらのツーリズム開発の方針検討では、未調査である北川内に関して保全手法・開発方針・修景手法の検証を行う。次にc)の社会システム検証を行い、これまでの調査から得られた知見を基に景観を保全しつつそれを観光資源として活かした持続可能な地域開発型のまちづくりの条件を明らかにする。 (1)ツーリズム分析:観光活動の経緯を文献資料と行政や観光協会、地元商店街へのヒアリングにより把握する。黒木に関しては地区最大の祭の「大藤祭」時に観光客へのアンケート調査を実施し、観光地として現状把握と課題を分析する。また、3地区において入り込み客の推移や観光関連業者へのヒアリング、観光施設の整備状況等を調査し観光活動が地域へ与えた影響を分析する。これらと前年度の結果からツーリズム開発の課題を分析する。 (2)修景手法検証:建造物のデザイン誘導手法および公共事業の整備方針について観光地としてある程度成功している豆田の調査を行う。修景マニュアルの分析と修景された建築物や工作物の現地調査を行い、それらが景観の価値をどのように高め観光客の増加に繋がったのか検証を行う。 (3)社会システム検証:景観を支えている組織や人々の活動について3地区でヒアリングと文献調査を行い、景観を支える社会システムを明らかにする。 (4)ツーリズム開発検証:国内外の景観ツーリズム先進地の現地調査を行いどのようなシステムで景観を保全しながら観光地形成が行われてきたかを把握し、それを参考としながら豆田町の景観保全とツーリズムの関係から持続可能な地域景観ツーリズム開発モデルを構築する。そしてそれを用いて黒木と北川内で検証を行い、課題を抽出し、地域の景観を観光資源として活かした持続可能な地域開発型まちづくりの条件を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度はツーリズム分析と景観を保全しながらのツーリズム開発の方針検討のための北川内での保全手法・開発方針・修景手法の検証および黒木と豆田での修景手法の検証を行うために以下のように研究費を使用する予定である。 (1)旅費;ツーリズム分析のためのヒアリング調査やアンケート調査のために研究代表者と学生3人のための旅費で、3地区で延40日を予定している。及び学会で成果発表のための研究者と学生の旅費が必要である。 (2)謝金:調査データ入力のための学生への謝金が必要である。 (3)物品費:データ入力及び分析のためのパソコン及びソフトウエア購入費。 (4)その他:アンケート票印刷費や通信費。
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