研究課題/領域番号 |
24612003
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
山本 敦 中部大学, 応用生物学部, 教授 (60360806)
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研究分担者 |
小玉 修嗣 東海大学, 理学部, 教授 (70360807)
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キーワード | ハロゲン化合物 / 選択的吸着剤 / オンレジン蛍光分析法 |
研究概要 |
前年度に引き続き、溶質の吸着に関与する分子間の相互作用として、非常に弱い相互作用である分散力の評価を行った。種々の臭素化フェノキシ基を導入した重原子型吸着剤をLCカラムに充てんし、対照化合物との分離度を比較することで導入率の影響を取り除いた純粋な相互作用の比較を行った。その結果、重原子型分離剤ではハロゲン化フェノールのみならず、ハロゲン化ベンゼンに対しても明らかな選択性を発現することを明らかにした。特に、移動相有機溶媒組成の高い、いわゆる順相モードで強い選択性が発現した。昨年度の溶質の有機双極子の影響に加え、溶媒和の影響が溶質の保持に大きく影響を及ぼすことを明らかにした。 重原子型吸着剤を発展させた p-ニトロフェノキシ基を導入した双極子型吸着剤 (PNP) を使った「オンレジン蛍光分析法」による応用研究も継続した。PNP 吸着剤は、ネオニコチノイド系薬剤に対して選択性を発現する。一方、ネオニコチノイド類のイミダクロプリドは蛍光性を持たないが、アルカリ条件下光照射で蛍光性を示すことが知られている。この光誘起オンレジン蛍光装置にPNP吸着剤をインラインに組み込んだ分析系を構築した。光照射時間や溶離液pHの最適化を図ることで、農産物中の 0.5 ppm イミダクロプリドを確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、固相抽出における吸着剤官能基と溶質間に働く相互作用の影響調査とその制御である。従来固相抽出とは、水素結合や親油性相互作用のような比較的強い力が支配する分離の場であり、序でに弱い副次相互作用も利用する程度の認識しかなかった。申請者らは、重原子に基づく分散力の吸着に及ぼす影響を調べる目的で臭素化フェノキシ基を導入した分離剤を合成・評価し、強い相互作用が働かない溶液条件においては非常に弱い相互作用である分散力も主相互作用になりうることを初めて実証しえた。一方で、臭素化フェノキシ基の持つ永久双極子がもたらす溶質への誘起効果が非常に大きいことも明らかにし、より大きな双極子を有する p-ニトロフェノキシ基を導入した吸着剤の開発へと繋がった。これら選択的吸着剤を使った食品分析への適用も進展した。複雑なマトリクスを有する食品分析において、これら弱い相互作用が発現する吸着剤の有用性を明らかにできたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、分散力が主相互作用として働く分離の場構築を目指して吸着剤の開発を行ってきた。ここで派生した吸着剤が双極子に基づく相互作用を有する吸着剤で、様々な分野への応用が可能な優れた特性を発揮した。官能基としての芳香環は、親油性やπ-π相互作用を発現させるために不可欠であるが、双極子を生じてしまう。そこで平成 26 年度には、ポリチオアミド型の吸着剤を合成・評価する予定である。合成方法としては、鎖状のポリエチレンイミンを導入した後に、Kindler 反応でチオベンズアミド型への誘導を図る。これによって双極子の影響は相殺され、純粋に分散力が評価できるものと考えている。 一方でオンレジン分析への適用は、研究最終年として新規の吸着剤も含めて広く展開していきたい。ネオニコチノイド系殺虫剤は、イミダクロプリド以外の光誘起蛍光法を確立しており、包括的なネオニコチノイドスクリーニング法として確立していきたい。また、カビ毒オクラトキシン用の吸着剤の開発も進んでおり、オンレジン分析法として完結させたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25 年度中にポリチオアミド型の吸着剤を合成・評価する予定であったが、臭素化フェノキシカラムによる LC 保持挙動の解析において新規知見が多く得られ、その確認データどりに時間がとられてしまった。この分を次年度に繰り延べしたいと考える。 吸着剤坦体となるベースゲルはメーカより購入する。鎖状のチオベンズアミド基導入試薬の購入費や吸着剤評価で使うカートリッジ基材や溶媒等の購入費に充てる予定である。
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