研究課題
昨年度までに、新規Gab1 DMRを同定し、正常胎盤においてH3K4me3やH3K9me2などのヒストン修飾がアレル特異的に見られることを明らかにした。本年度は、Gab1 DMRの配列特性の解析および、様々な組織におけるGab1 DMRのDNAメチル化解析を行った。RepeatMaskerを用いたGab1 DMRの塩基配列解析より、Gab1のDMRおよび第一エキソンは、LTRの一種であるRLTR15と高い相同性を示すことを発見した。さらに、Gab1 cDNAのシークエンシングを行い、LTRの転写開始点およびスプライシングサイトが胎盤において機能していることを確認した。よって、Gab1はLTRの挿入によってインプリンティングを獲得したと考えられる。このLTRの挿入はげっ歯類特異的であり、ヒトおよびその他の脊椎動物では見られなかった。一方、胎児細胞ではGab1 DMRは両アレルとも高度にメチル化されており、転写開始点としての働きも失っていた。興味深いことに、Gab1 DMRは核移植直後に両アレル共に脱メチル化されており、その結果クローン胎盤ではGab1が両アレルから発現していると考えられる。これまでに、LTRがDMRとして働く例は報告されていない。Gab1 DMRの発見は、LTRのサイレンシングとゲノムインプリンティングとの間に、共通の制御機構が存在する可能性を示唆している。また、核移植によって引き起こされるDNAメチル化制御異常が、クローンマウスにおける遺伝子発現異常の原因の一つであることが強く示唆された。
2: おおむね順調に進展している
インプリント遺伝子がLTRの挿入によって新規に獲得される例を初めて発見した。この結果はゲノムインプリンティングの進化および、クローンのDNAメチル化制御異常を理解するうえで重要であり、十分な成果が得られたと考えている。
最終年度はGab1 ヘテロKOマウスの胎盤の形態異常について、詳細な解析を進める。また、Gab1 ヘテロKO細胞を用いたクローンの作製を行い、胎盤異常の有無を解析する。
今年度は研究成果発表できるまでの成果に至らなかったため、旅費、準備等の資金を繰り越すこととした。今年度は、Gab1 ヘテロKOマウスの胎盤の形態異常について、詳細な解析を進め、また、Gab1 ヘテロKO細胞を用いたクローンの作製を行い、胎盤異常の有無を解析する。この結果を用いて研究成果の発表を行うため必要な経費として、平成26年度請求額とあわせて使用する予定である。
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