研究課題/領域番号 |
24613004
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
多田 政子 鳥取大学, 染色体工学研究センター, 教授 (10524910)
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キーワード | DNAメチル化 / 5-ヒドロキシメチル化 / ES細胞 / クロマチン / リプログラミング |
研究概要 |
1. 研究実施内容:エピジェネティクスを制御している酵素群がその機能を発揮するには様々な要因があり、酵素自体の活性制御だけでなく、ターゲットとなる染色体領域のクロマチン構造も重要である。DNAは分裂中期には高度に凝縮した染色体構造をとり、転写活性の高いG1期やDNA合成がおきるS期には脱凝集される。我々は、初期胚発生における核のリプログラミングや細胞周期を介したターゲット領域側のクロマチン構造の緩和が、DNAメチル化(5mC)酵素や5mCを5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)に変換するTet酵素の働きを制御している可能性を見いだしている。しかし、我々が用いている染色体の免疫染色法はDNA修飾の局在性を判定できるが、量的評価には向いていない。そこで、我々は、in vitro分化誘導によって異なる発生段階のマウス胚性幹細胞(ES細胞)から染色体標本とDNAサンプルを回収し、染色体上の5hmCの局在性の可視化すると同時に定量的解析を行った。 2. 結果: マウスES細胞では、分化誘導により生じたクロマチンの緩和状態に応じて5hmC変換領域の著しい拡大と5hmCの量的増加が対応してみられることを確認した。 3. 意義:このクロマチン緩和と5mCから5hmCへの変換制御との密接な関係性を利用すると、初期胚では5hmC領域変化からクロマチン状態を予測できる。また、強制的にクロマチンの緩和を誘導することによって維持されている潜在的5mCを5hmC化によって可視化することが可能となる。 4. 重要性:安定で固定化された遺伝情報と考えられてきた5mCであるが、幹細胞では細胞の状態や細胞周期によって局在性や量が大きく変動していることが明らかになれば、現在主流になっているエピジェネティクの網羅的な解析は、不均質な細胞集団における5mC化および5hmCパターンの平均値を示すことを認識できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の実験計画・方法の概要で、以下の研究項目を掲げている:① 始原生殖細胞由来EG細胞を用いて脱メチル化機構を明らかにする;② インプリント消去に関わる初期化因子を同定する;③ EG細胞/ES細胞/Dnmt TKO ES細胞(5mCのないES細胞)を比較し、5hmC化、Dnmts活性制御、塩基除去修復等の関与を検討する。昨年度は③に関して論文発表した。本年度は、マウスES細胞での5hmC変換後の再メチル化に関わる酵素の活性制御機構を解析した。この過程で、これまで予想してきたことと異なるDnmtの性質を見いだした。この新たな知見は大変重要であるため、これを証明するため新たにDnmt強制発現細胞を用いた実験を開始した。その詳細については非公開とし、最終年度の評価として報告したい。5mCから5hmCへのスイッチングは生体では主に初期胚と始原生殖細胞でおきているため、当初目的の発展的研究と位置づけ出来る。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、マウスES細胞などの幹細胞では、エピジェネティクスを動的に制御することで細胞集団として一定のプロファイルを維持する機構が存在し、この活性の総和が核のリプログラミングを引き起こしていると考えている。我々は、マウスES細胞では5mCから5hmCへの変換を介して脱メチル化と再メチル化を連続的に行っている現象を見いだし、その早いエピジェネクスのスイッチング現象を証明する詳細なデータの蓄積を目指している。2012-2013年は、5hmC変換に重点を置いていたが、本年は再メチル化機構に重点を置く。このため、Dnmtの発現ベクターをES細胞に導入し、その役割を以下に項目について検証する。 1. 5hmC変換後の再メチル化時期(細胞周期)の特定。 2. 5hmC変換後の再メチル化酵素特定。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度は、論文発表に備え、細胞培養や生化学実験に予算の確保が必要である。また、成果発表のための旅費や論文投稿料を要する。このため、最終年度に予算を残した。 上記の如く、論文発表に備え、細胞培養や生化学実験、成果発表のための旅費や論文投稿料に適切に使用する。
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