研究概要 |
本研究では、ヒト染色体・クロマチン構造の制御に関わるエピジェネティクス関連因子群のうち、乳がん・直腸がん・神経腫瘍などの難治性がんや生活習慣病の発症との関連が示唆されているヒストン脱メチル化酵素LSDファミリー等が、メチル化クロマチンを脱メチル化して転写抑制に働く分子機構をヌクレオソームコアの階層で解析することを研究目的としている。H25年度は、FAD含有ヒストン脱メチル化酵素ファミリーのLSD1とLSD2が脱メチル化標的とするヒストンH3のLys4のモノメチル化修飾を含むヌクレオソームの再構成技術を開発した。LSD1/LSD2の結合および脱メチル化活性等を評価するため、Boc保護したモノメチルリジンをヒストンH3のLys4, Lys9, Lys27およびLys4とLys27に残基特異的に導入したタンパク質を大腸菌無細胞合成法の検討と条件の最適化により取得した。その後、調製した全長H3タンパク質をアフィニティー精製した後にトリフルオロ酢酸条件等を用いた脱Boc反応を行い、その条件を最適化した。これら条件検討により調製したタンパク質を残基特異的モノメチルリジン認識抗体によるウェスタンブロットおよび質量分析で解析することにより、目的とするモノメチルリジン(Kme1)修飾を含む全長ヒストンタンパク質の調製技術を確立した。また、LSD1およびLSD2の酵素活性中心がリジンメチル化ヌクレオソーム等との結合・脱修飾の分子機構を解析するため、大腸菌発現のLSD1およびバキュロウイルス発現のLSD2の調製・結晶化を進め、これらの酵素と基質ペプチド・低分子化合物等との共結晶構造解析を進めた。
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