研究課題/領域番号 |
24614002
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
長澤 孝志 岩手大学, 農学部, 教授 (80189117)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シトルリン / 骨格筋 / タンパク質分解 |
研究概要 |
シトルリンはタンパク質を構成しないアミノ酸であり、尿素回路の代謝中間体である。先の研究で、シトルリンにはロイシンと同様に骨格筋タンパク質の代謝回転を制御する可能性を示唆した。本研究では、シトルリンの骨格筋萎縮に及ぼす影響をより詳細に解析するために、まず分解抑制に対して効果があるのはシトルリンかその代謝産物であるアルギニンかどうかについて検討した。 ラットにシトルリンあるいはアルギニンを経口投与したところ、シトルリン投与により、骨格筋タンパク質の分解が投与後1~6時間で抑制された。一方、アルギニン投与では顕著な分解抑制作用は認められなかったことから、シトルリンが直接分解を抑制する可能性が示唆された。血中のシトルリンおよびアルギニン濃度はシトルリン投与後高いレベルで維持されたが、アルギニン投与ではほとんど増加しなかった。したがって、シトルリンは投与後に長時間シトルリンとアルギニン濃度を維持できる効果があることが示唆された。シトルリンは安全性の高いアミノ酸であり、本実験結果は臨床的な応用も期待できる。 シトルリンの分解抑制作用をオートファジーの調節因子であるLC-3IIの発現とユビキチン化タンパク質のウエスタンブロットから解析したところ、前者はシトルリン投与後にLC3-IIの比率が減少したが、ユビキチン化タンパク質には変化がなかった。したがって、シトルリンが主にオートファジー/リソソーム系の阻害によるものと考えられた。 次に筋萎縮モデルとして尾部懸垂を施したラットでシトルリンの効果を検討した。1日間尾部懸垂したラットにシトルリンを投与したが、分解抑制作用は認められなかった。またシトルリン添加食を摂取しているラットでも尾部懸垂による筋萎縮を抑制できなかった。以上より、尾部懸垂初期の筋萎縮にはシトルリンは効果がないことが示されたが、さらに詳細な検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シトルリンの骨格筋タンパク質分解抑制作用については再現性よく確認することができた。その作用についてシグナル伝達の側面からの解析も実施できた。さらに、代謝産物であるアルギニンによると考えるよりも、シトルリンに作用があると考える方が妥当である結果を得た。しかし、in vivoで解析した場合は常に尿素回路による相互の変換があるため明確にはできない。これについては25年度に研究を進める。以上の研究結果は、おおむね研究実施計画通り進展したと考えられる。 尾部懸垂モデルにおけるシトルリンの骨格筋萎縮抑制作用については、予想に反して明確な効果を認めることができなかった。しかし、尾部懸垂モデルにおける骨格筋タンパク質の合成と分解速度が懸垂初期と後期で大きく異なる可能性が見いだされ、24年度の検討が適切なモデルになっていない可能性も考えられた。この点については25年度に改めて検討を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
シトルリンの骨格筋タンパク質分解抑制作用がシトルリンそのものによるのか、代謝産物によるものかを明確にするために、尿素回路を考慮しなくてよい骨格筋の培養細胞を用いた検討を実施する。C2C12筋管細胞を用いた系による検討が妥当かどうか、まず検討する必要がある。妥当であると判断できればシトルリンとアルギニンの作用を比較検討し、シグナル伝達などを含めて詳細な解析を行う。 廃用性筋萎縮モデルである尾部懸垂については、最もレスポンスがよい時期を明確にし、その時点におけるシトルリンの作用とシトルリン摂取によるベネフィットを明らかにすることが重要である。 また、シトルリン以外のタンパク質非構成アミノ酸の作用、特にクレアチンについての検討も行う。クレアチンは廃用性筋萎縮よりもむしろ運動における利用がエビデンスなしに進んでいるので、運動、非運動両者における作用を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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