研究課題/領域番号 |
24614006
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
八十島 安伸 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (00273566)
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キーワード | ショ糖 / 過剰摂取 / 学習 / 味覚感受性 |
研究概要 |
食べ物の「おいしさ」情報によって惹起される食べ過ぎの形成・保持の脳内学習メカニズムを探るために、マウスを用いて過剰摂取行動モデルを作成した。この行動訓練によって、制限給餌下におかれた訓練群マウスに高濃度ショ糖溶液の間歇呈示を毎日経験させると、訓練群は対照群に比べて約4倍量のショ糖溶液を摂取するようになった。この行動が学習性であるのかどうかを確かめるために、訓練を毎日行わず、3日間のインターバルを置いて行うと、ショ糖の摂取量は訓練再開の初日にはインターバル前のレベルから増加していくことがわかった。 また、内臓からの摂食抑制性情報への脳幹部での応答性や血糖値の上昇などは、過剰摂取を行うマウス群では対照群に比べて有意に減衰していることが示唆された。 さらに、過剰摂取行動を形成させるために変化が生じた脳メカニズムが、学習に関わるメカニズムなのか、もしくは味覚経験に基づく味の感受性変容に関わるメカニズムなのかどうかを明らかとするために、味覚の情報処理に関係する視床味覚野、もしくは大脳皮質味覚野を破壊し、過剰摂取行動の形成について行動学的に検討した。両側の視床味覚野または大脳皮質味覚野を破壊されたマウスでは、非破壊群マウスと同様なショ糖の摂取量増加を示した。さらに、大脳皮質味覚野を破壊されたマウスでは過剰摂取行動がさらに増強される可能性が示唆された。以上から、過剰摂取行動モデルによって、マウスがショ糖溶液を過剰に摂取するのは、味覚情報処理の変化による味覚の感受性増強に起因するのではなく、学習性に行動が強化されるためであると示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の大本となる行動モデルの確立のために確認するべき点が予想よりも増えてしまい、そのための時間がかかった。ただ、これらの点は今後の本研究の進展には不可欠であるので、本研究でも慎重に行った。今後の研究期間で、過剰摂取行動に対する学習の寄与を明らかとする実験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験で過剰摂取行動の行動特性はほぼ明らかとされたので、今後は学習性メカニズムに関わる脳部位の機能を探る実験に注力する。側坐核を破壊することで、同行動の形成に関わるメカニズムを明らかとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
行動モデル作成において、確認しておくべき行動特性が生じたので、本来の実験を一端中断したので、計画通りの執行ができなかったため。 本年度は、計画を再考して実施する。
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