研究課題
過剰摂取の学習行動としての特徴と、甘味刺激などの味覚報酬がそれを強化することを実証しうる動物モデル系の作製を目指し、以下のようなマウス行動モデルを創出し、その脳・生理基盤の一端を調べた。先ず、制限給餌下でのショ糖溶液の間歇呈示訓練を用いてショ糖過剰摂取モデルを開発した。訓練されたマウスは、訓練前に比べて約4倍量のショ糖溶液を短時間で摂取するになった。ショ糖過剰摂取モデルには以下の特色がみられた。(1)訓練後に自由給餌条件下でもショ糖過剰摂取が数日は継続した。(2)カロリーの無い人工甘味料を用いてもその摂取量はショ糖ほどではないが増大した。(3)事前にグルコースを末梢投与しておいてもショ糖過剰摂取は抑制されなかった。(4)ショ糖呈示前に固形飼料を一定量摂餌した後でもショ糖過剰摂取は減少しなかった。(5)より長い訓練期間を経験すると、訓練休止期間後の再訓練時のショ糖摂取量は、短い訓練期間の場合よりも短期間で増大し、再発しやすることがわかった。(6)訓練期間中に制限給餌と自由給餌を交互に繰り返しても、一端増加したショ糖摂取量は訓練前のレベルには戻らず、訓練効果は自由給餌期間中でも継続されていた。次に、甘味刺激への嗜好変化という行動変容を強化する味覚嗜好学習の行動・脳メカニズムを探るために、サッカリンよりもショ糖をより多く摂取するようになる学習モデルを作製した。そして、その嗜好学習には扁桃体基底外側核が関与することを明らかとした。以上の結果から、本研究で開発された過剰摂取モデルや嗜好シフトは学習行動の一種であることが示唆され、その行動変容は長期的に保持されたり、再発しやすいこと、さらに、代謝的・エネルギー的な要求よりも味覚報酬が強化子となっていることが分かった。また、嗜好性変容には扁桃体機能が関与することが示唆された。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件)
Physiology & Behavior
巻: 138 ページ: 154-164
http://dx.doi.org/10.1016/j.physbeh.2014.10.035
Neuroscience
巻: 291 ページ: 203-215
10.1016/j.neuroscience.2015.02.009
日本味と匂学会誌
巻: 21 ページ: 315-318
巻: 21 ページ: 319-322