研究課題/領域番号 |
24614011
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
大曲 勝久 長崎県立大学, 看護栄養学部, 教授 (90244045)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 非アルコール性脂肪性肝炎 / フィコシアニン / 内皮型一酸化窒素合成酵素 / アディポネクチン / 肝線維化 |
研究概要 |
9週齢雄性SHR/NDmcr-cpラット計28匹を、普通食(脂肪エネルギー比10%)投与群、普通食+フィコシアニン0.25%混餌食投与群、普通食+フィコシアニン0.5%混餌食投与群、普通食+フィコシアニン1.0%混餌食投与群の4群に分け(各群7匹ずつ)、自由摂取させ25週間飼育した。34週齢時に屠殺し血液および肝臓組織を採取し比較したところ、血清脂質や肝組織には有意差はみられなかった(肝臓には明らかなNASHの所見がみられなかった)が、フィコシアニン投与群において用量依存的に高血圧抑制効果がみられ、この効果はアディポネクチンを介した内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)発現誘導によることが推察された。 また、9週齢雄性SHR/NDmcr-cpラット計18匹を、コレステロール5%およびコール酸2%を含む高脂肪・高コレステロールHFC食(脂肪エネルギー比28.6%)投与群、HFC食+フィコシアニン0.5%混餌食投与群、HFC食+フィコシアニン1.5%混餌食投与群の3群に分け(各群6匹ずつ)、自由摂取させ9週間飼育した。18週齢時に屠殺し血液および肝臓組織を採取した。HFC投与群においては、血清トリグリセリド値および総コレステロール値の高値を認め、全てのラットで高度線維化を伴うNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)の組織像が確認された。フィコシアニン投与群との血清学的、組織学的な差はみられなかった。NASHの病態解明や治療法の確立のためにはNASHの動物モデルの確立が必要とされるが、齧歯類では肝線維化は生じにくく、長期間の飼育を要するとされている。今回の結果から、9週間という短い期間で肝硬変を伴うNASHの組織像が確認されたが、コレステロール含有飼料の意義の解明とともに、フィコシアニンの効果を確認するには軽度から中等度の線維化を伴うNASHの動物モデルの作成が必要であると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究により、フィコシアニンがNASHだけでなく、アディポネクチンを介した内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)発現誘導による高血圧抑制効果も持っていることが推察された。当初の実験モデルでは、交付申請書の「研究目的」に記載した「フィコシアニンによるNASH発症抑制効果およびその機序」の解明には不適当であったため、高脂肪食にコレステロールを添加した食餌をラットに与えて肝組織への影響を検討したところ、著明な肝線維化を伴うNASHモデルが観察された。この2つの結果はこれまで報告されておらず、貴重な成果だとおもわれる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度行った2つの動物実験では、明らかなNASHの組織所見がみられなかったり、線維化が高度であったために、フィコシアニンの効果を検証することができなかった。しかしながら、高脂肪だけではなく高コレステロールを加えた食餌を投与すれば線維化を伴うNASHモデルの作成が可能であることが判明したので、来年度以降は、まず高脂肪食に加えるコレステロールの量を調整し、軽度~中等度の線維化を伴ったNASH動物モデルを作成し、その発症機序を検討したい。その上でフィコシアニンを投与しNASHに対する効果を再度検証したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
NASHモデル動物(ラット等)の購入費および飼育費(餌作成費用を含む)。 フィコシアニンの作用機序の解明のための組織学的検討試料作成および分子生物学的・生化学的マーカー測定キット費用。 学会発表および論文作成費用。
|