研究課題/領域番号 |
24614011
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
大曲 勝久 長崎県立大学, 看護栄養学部, 教授 (90244045)
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝炎 / 高コレステロール食 / 肝線維化 / SDラット |
研究概要 |
昨年度の研究において、高脂肪だけではなく高コレステロールの食餌をラットに投与すれば線維化を伴うNASHモデルの作成が可能であることが判明したため、今年度はメタボリック症候群モデルラットであるSHR/NDmcr-cpラットに代えて通常のラットであるSplague-Dawley(SD)ラットを用いて、肝線維化を伴ったNASH動物モデルを作成し、その発症機序を検討することとした。 9週齢雄性SDラット計20匹を、普通食(脂肪エネルギー比13%)投与群、高脂肪食((脂肪エネルギー比59%)投与群、コレステロール1.25%およびコール酸2%を含む高脂肪・高コレステロール食(脂肪エネルギー比58%)投与群、コレステロール2.5%およびコール酸2%を含む高脂肪・高コレステロール食(脂肪エネルギー比57%)投与群の4群に分け(各群5匹ずつ)、自由摂取下で9週間飼育した。18週齢時に屠殺し血液および肝臓組織を採取し比較したところ、血清および肝臓の総コレステロール濃度は投与したコレステロール濃度依存的に有意に高値を示し、肝臓の病理組織学的評価においては普通食投与群に比較して高脂肪食投与群では線維化を伴わない軽度の脂肪沈着と炎症がみられた。一方、高脂肪・高コレステロール食投与群では高度の脂肪沈着、炎症、肝細胞の風船様膨化および線維化がみられ、特にコレステロール2.5%を含む高脂肪・高コレステロール食投与群では5匹中2匹(40%)が肝硬変に進展していた。肝臓からのVLDL排泄の律速酵素であるmicrosomal triglyceride transfer proteinや肝臓から胆汁へのコレステロール排泄を促進するATP-binding cassette transporter G5のmRNAレベルと、肝臓でのβ酸化の指標であるcarnitine palmitoyltransferase酵素活性は、コレステロール濃度依存的に有意に低値を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究結果より、遺伝子的欠損がない動物を用いて、高脂肪・高コレステロール食という栄養学的にヒトが摂取する、より現実的な食事を短期間摂取させることで、9週間という短い期間で肝硬変を伴うNASH動物モデルを作成することが可能であることが明らかとなった(論文投稿中)。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究結果より、高脂肪・高コレステロール食投与により9週間という短い期間で肝硬変を伴うNASH動物モデルを作成することが可能であることが明らかとなった。しかし、この飼育期間では40%のラットで肝硬変に進展しているに過ぎず、より確実な肝硬変モデルを作成するには、より長期間の飼育が必要であるとおもわれる。次年度においては、ほぼ全てのラットで肝硬変を伴うNASHモデルを作成したい。また、その上で、肝線維化をきたす機序の解明と、前年度検討したフィコシアニンのNASH予防効果を再検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の研究成果を論文にまとめ投稿準備を行っており、ネイティブスピーカーに英文校正を依頼している。現時点で校正が完成しておらず、その費用を次年度に繰り越すため。 前年度の研究成果を英文論文にまとめ、学術雑誌に投稿する。英文校正費用および掲載料として使用する。
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