研究課題
昨年度の研究では、通常のラットであるSplague-Dawley(SD)ラットを用いて、高脂肪・高コレステロール食を9週間与えることにより、高度な肝線維化を伴ったNASH動物モデルを作成した。このモデルにおいて、肝臓における脂質代謝関連遺伝子発現および酵素活性を検討した結果、脂肪酸β酸化に関与するCPT活性は高値を示す一方で、肝臓における脂質排出経路の一つである超低密度リポタンパク質の合成に関与するMTPのmRNA発現量は低下していたことから、HFC食摂取によって脂肪酸β酸化能の低下やトリグリセリドおよびコレステロール排出能の低下を生じていることが示唆された。今年度は、引き続き高脂肪・高コレステロール食の摂取によるNASH発症の機序の検討を行った。肝臓における胆汁酸代謝関連遺伝子の発現の検討では、胆汁酸合成の律速酵素であるCYP7A1のmRNA発現量は高値を示した一方で、肝臓コレステロールを胆汁中へ排出する輸送担体であるABCG5のmRNA発現量は低下傾向にあり、胆汁酸合成の亢進および胆汁酸抱合・排出の低下が示唆された。それには核内受容体farnesoid X receptor (FXR)による胆汁酸恒常性の維持の破綻が関与している可能性が考えられた。また、肝臓の線維化に関連するコラーゲンタンパク質コード遺伝子であるCOL1A1およびCOL4A1のmRNR発現量は高値を示し、線維化の誘因因子であるTGF-β1もコラーゲン遺伝子と類似したmRNA発現傾向を示した。続いて、このラットモデルを用いてフィコシアニンを9週間同時摂取させることにより、NASH発症が抑制されるか、肝臓の病理組織学的検討を行った。その結果、血清ASTおよびALT値はフィコシアニン添加濃度依存的に低下する傾向を示したが、フィコシアニン非添加群に比べて、肝脂肪沈着の程度はやや軽度であったものの、肝線維化を含めて明らかな肝組織学的な改善はみられなかった。
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