研究課題/領域番号 |
24614012
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
木村 治 北海道医療大学, 薬学部, 講師 (10418882)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 安定同位体比 / 経腸栄養剤 / 毛髪 / 胃瘻造設患者 / 微量元素 |
研究概要 |
健常者および経腸栄養剤の投与を受けている患者(胃瘻造設患者も含む)から毛髪採取を行い、毛髪中の安定同位体比(δ13Cとδ15N)の分析を行った。さらに経腸栄養剤中の安定同位体比の分析も同時に行った。 分析した約半数の患者毛髪中の安定同位体比の結果は、δ13C-δ15Nマップ上で健常者の左上に分布し(δ13C値は低くδ15Nは高い)、この分布は拒食症患者や飢餓状態の場合と類似していた。これは約半数の患者の栄養状態が低いことを示唆している。しかし、残りの患者は健常者とほぼ同じ位置に分布し、その栄養状態は比較的良好であると思われた。患者毛髪中のδ15Nと経腸栄養剤の投与カロリーとの間には有意な負の相関が認められ、δ13Cとの間には有意な正の相関が認められた。即ち、経腸栄養剤の投与カロリーが多いほど患者毛髪中のδ13Cとδ15Nは健常者の平均値に近づいた。一方、患者の栄養状態の指標としてよく用いられるBMI(body mass index)や血清アルブミンと患者毛髪中のδ13Cあるいはδ15Nとの間には一定の相関関係は認められなかった。これらの結果から、患者頭髪中のδ13Cとδ15Nは、BMIや血清アルブミンよりも長期間の栄養状態をよく反映していることが考えられる。 患者が服用していた栄養剤であるラコール、CZ1.5およびK4Sは窒素源として乳タンパクを含んでいる。一方、エレンタールとアミノレバンは窒素源としてC4植物を起源とするアミノ酸を含む栄養剤であるため、そのδ15N値は乳タンパクを含む栄養液より低く、δ13C値は高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者および経腸栄養剤の投与を受けている患者の毛髪採集は順調に進んでいる。毛髪中の安定同位体比の分析も順調に進み、健常者は100例を越えている。経腸栄養剤を長期間服用している患者の栄養状態の評価方法もある程度確立した。もう一つの研究課題である毛髪中の微量元素については、分析方法を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
経腸栄養剤の投与を受けている患者毛髪中の微量元素の分析方法を早急に確立し、分析を行う。また糖尿病などの生活習慣病患者からの毛髪採取を行い、安定同位体比と微量元素の分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度と同様に、健常者および経腸栄養剤の投与を受けている患者からの毛髪採取を行う。また糖尿病などの生活習慣病患者からの毛髪採取も行う。次年度の予算の大部分はこれらの毛髪試料中の安定同位体比と微量元素の分析のために使用する。研究遂行上、至急安定同位体や微量元素の分析結果を必要とする場合にはその分析を外部機関へ依頼する。その場合の費用は次年度への繰越金を充当する。
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