研究課題/領域番号 |
24614012
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
木村 治 北海道医療大学, 薬学部, 講師 (10418882)
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キーワード | 安定同位体比 / 経腸栄養剤 / 毛髪 / 胃瘻造設患者 / 微量元素 |
研究概要 |
前年度と同様に、健常者および経腸栄養剤の投与を受けている患者(胃瘻造設患者も含む)から毛髪採取を行い、毛髪中の安定同位体比(δ13Cとδ15N)の分析を行った。栄養状態の良くない胃瘻造設患者の毛髪中の安定同位体比は、健常者のδ13C-δ15Nマップ上の左上に位置し、拒食症などの場合の分布と類似していた。中心静脈で栄養管理されている患者の毛髪と栄養剤の安定同位体比を測定したところ、健常者のδ13C-δ15Nマップ上の右下に分布し、経腸栄養剤で栄養管理されている患者の場合と異なった。この相違は中心静脈栄養剤が含有しているアミノ酸の原料に由来していると思われる。栄養状態の悪い患者の毛髪を加水分解し、得られた14種類のアミノ酸の安定同位体比を健常者の場合と比較した(ドイツのDr. Petzkeへ分析を依頼した)。この結果から低栄養の胃瘻造設患者の場合には、分枝鎖アミノ酸であるVal、Leo、Ileのタンパク異化が亢進し、拒食症の場合と類似していることが明らかとなった。 治療を受けている(栄養管理されている)糖尿病患者の毛髪中の安定同位体比は、健常者のδ13C-δ15Nマップの左側に分布し、これは食事療法などにより低カロリー状態に管理されているためと思われる。糖尿病患者の診断基準(栄養状態)には血液中のグリコヘモグロビン(HbA1c)が用いられている。現在HbA1cと安定同位体比との相関関係について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
健常者および経腸栄養患者の毛髪採集は順調に進んでおり、毛髪中の安定同位体比の分析も進んでいる。しかし、論文として発表するにはまだ毛髪試料数が不足している。毛髪採取に協力してくれる医療機関などと連携して早急に進める必要がある。糖尿病患者の毛髪についてもある程度の分析結果を得ており、学会発表を予定している。消化管に障害があるため栄養状態が悪いクローン病患者の毛髪を分析中である。その他の生活習慣病患者の毛髪試料の採取も早急に進め、生化学的検査値と安定同位体比との相関性について検討している。毛髪中の微量元素分析は、専門の分析業者への委託も含めて、検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度と同様に、健常者および経腸栄養剤の投与を受けている患者からの毛髪採取を行う。また糖尿病などの生活習慣病患者からの毛髪採取も行う。栄養状態の指標であるBMI、血清アルブミン値およびコレステロールなどと毛髪中安定同位体との相関性について検討する。また、健常者と経腸栄養剤の投与を受けている患者および生活習慣病患者の毛髪中の微量元素分析を行い、欠乏症などを検討する。各疾患患者から採取した毛髪を加水分解し、個々のアミノ酸について安定同位体を分析することで、アミノ酸レベルでの安定同位体比の分析結果から栄養状態の評価方法の確立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
患者毛髪の採取が思うようにできず、分析が滞ったため。数か月間学外研究員として出国しているので国内での研究ができなかったため。 研究遂行上至急毛髪中の安定同位体や微量元素の分析を必要とする場合には外部へ分析依頼するが、その場合、次年度への繰越金と今年度の助成金を使用する。
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