研究課題/領域番号 |
24614013
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
角田 伸代 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 老化制御研究部, 研究員 (60337483)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インクレチン / DPP4 / 魚油 / EPA / DHA / パルミチン酸 / リノール酸 |
研究概要 |
魚油には、体重増加抑制、血中脂質低下作用、脂肪肝改善作用などの多岐にわたる効能が知られるが、その機序はいまだ明確ではない。 魚油の主成分であるEPA、DHAは、小腸のGPR120を受容体のひとつとしていることが知られる。一方、GLP-1も、小腸のGPR120を介して分泌され、魚油と似通った効能を有する。GPR120をノックアウトした報告では、GLP-1の分泌低下と肥満が生じ、この受容体が食事性油脂のセンサーとして働き、身体のエネルギー状態をコントロールしていることを示唆している。また、魚油を多量摂取している人では、DPP4阻害薬の効きがよいとの報告やEPA、DHA摂取によって脂肪から分泌されるDPP4が低下するとの報告もある。よって、魚油の作用機序にGLP-1が関与している可能性あり、近年使用頻度の高まっているDPP4阻害薬と魚油との相互作用が示唆される。 そこで本研究では、魚油の作用機序に及ぼすインクレチンの役割について検討を行うことを目的とした。まず、上部消化管および下部消化管のプライマリー細胞を用い、脂肪酸添加によるインクレチン分泌への影響を検討しようと試みたが、実験系が上手く立ち上がらず明確な結果を得ることができなかった。そこで次に、DPP4活性に及ぼす脂肪酸の影響をin vitro系で検討した。DPP4に各種脂肪酸を添加したところ、パルミチン酸、リノール酸、DHA、EPAの順にDPP4阻害活性が高値を示し、パルミチン酸以外では濃度依存性が認められた。また、EPAとDPP4阻害剤を同時添加したところ、相加効果が認められた。 これらの結果から、EPA、DHAは高いDPP4阻害活性を有しており、魚油の作用機序の一因である可能性が示唆された。また、DPP4阻害剤の効きをEPAによって高められる可能性も示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題申請時と課題採択時の研究施設が異なっていたため、課題目的は同じであるものの、新規研究施設で実施できる研究手法を手探りしながら課題研究に取り組むこととなった。 その結果、上部消化管および下部消化管のプライマリー細胞を用い、脂肪酸添加によるインクレチン分泌への影響を検討しようと試みたが、実験系が上手く立ち上がらず明確な結果を得ることができなかった。しかし、DPP4活性に及ぼす脂肪酸の影響をin vitro系で検討したことによって、課題目的であった魚油の作用機序に及ぼすインクレチンの影響に対して有意義な結果を得ることができたので、課題研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
魚油摂取をとりいれた糖尿病食事療法について検討するため、今年度の結果を踏まえ、魚油摂取とDPP4阻害活性との関連について、糖尿病患者において検討することを次年度の目的とする。 DPP4阻害薬の効果を左右する血中DPP4活性をDPP4阻害薬未使用糖尿病患者において測定し、身体計測値(BMI、筋肉量、脂肪量など)、血糖コントロール指標(血糖、HbA1c、インスリン、C-ペプチドなど)、食物摂取状況(食品群別摂取量、栄養素摂取量など)との関連性について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、DPP4阻害活性測定に必要であるDPP4、DPP4阻害剤、各種脂肪酸、ELISAプレートなどの購入に多く使用する。身体計測機器の印刷用紙、トナー、採血用試験管などにも使用する。また、一般的消耗品であるチップ、チューブ、ピペット、手袋などにもあてる。 その他、DPP4量および血中EPA、DHAなどの濃度測定は、外部測定会社へ委託することを検討しているため、その費用にも研究費を使用する。 また、研究協力者にわずかながらの謝金を手渡すことも検討しているため、その費用にもあてようと考えている。
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