研究課題
基盤研究(C)
アルコール代謝酵素の一つである、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)遺伝子の変異によって惹起される骨粗鬆症の予防法の確立を目的とする。本研究では原因物質の効率かつ効果的な除去や骨形成の機能を亢進する機能性分子を探索すると共に、有用な機能性分子の経口摂取による骨粗鬆症への効果を評価し作用機序の解明を行う。現在までの研究ではALDH2遺伝子変異による有意な骨密度低下は血中のアセトアルデヒド濃度の上昇や骨芽細胞中の過酸化脂質である、ヒドロキシノネナールの蓄積にあることを見出している。本年度はMC 3T3-E1等の前骨芽細胞株を用いてアルデヒド存在下での骨芽細胞分化誘導時に対する抗酸化機能性物質を同時に添加した際のレスキュー効果を検討した。実験の結果、アセトアルデヒドを添加したMC 3T3-E1細胞は骨芽細胞分化形成が著しく妨げられるが、数種類の水溶性及び脂溶性抗酸化物質を添加した際に一部の抗酸化物質において著しい骨芽細胞形成能のレスキュー効果を示すことを細胞染色や骨形成分化マーカーの発現等によって確認した。また、ALDH2変異遺伝子を恒常的に発現するトランスジェニックマウス(ALDH2-DAL)の骨髄細胞を用いて骨芽細胞へ分化誘導能の検討を同様の手法で行った。その結果、MC 3T3-E1細胞と同様に同じ抗酸化機能性物質の添加によって骨芽細胞への分化形成能のレスキュー効果を骨芽細胞分化マーカー遺伝子やタンパク質の発現変化によって確認した。
2: おおむね順調に進展している
今年度の研究計画によって効果的に骨形成促進を示す抗酸化機能性物質のいくつかを見出した。研究の成果は途上であるため、学会等への報告は行っていないものの、今後さらなる研究を行って知見を得て、最終的には論文や学会にて発表していきたいと考える。
本年度は動物実験への実際の投与と効果について解析を進めていく予定である。脂質解析に際しては、北大の神先生の助言を受けながら実際に研究を進めていきたいと考える。
来年度は今年度において得られた結果をもとに、骨芽細胞に対してレスキュー効果を示した機能性物質をALDH2-DALマウスへ4週から3か月間経口投与し、骨への効果を検討する。食餌の調製については、一日の適正摂取量範囲内の機能性物質を計算して粉餌に混入、再成形して与える。投与後、下肢骨を骨密度測定、骨形態計測等や組織染色により測定、観察すると共に、遺伝子及びタンパク質レベルで骨分化形成マーカーの発現を解析する。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件)
Journal of Biological Chemistry.
巻: 287 (39) ページ: 32479-32484
巻: 287 (34) ページ: 28508-28517
10.1074/jbc.M112.356634.
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 421 (4) ページ: 785-789,
10.1016/j.bbrc.2012.04.084.
Journal of Bone and Mineral Research.
巻: 27 (9) ページ: 2015-2023
10.1002/jbmr.1634.
巻: 27 (6) ページ: 1289-1297
10.1002/jbmr.1575.
Biochemica et Biophysica Acta.
巻: 1820 (9) ページ: 1391-1398
10.1016/j.bbagen.2012.01.004.