研究課題/領域番号 |
24614014
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研究機関 | 前橋工科大学 |
研究代表者 |
星 淡子 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (50399812)
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キーワード | アルコール代謝酵素 / アセトアルデヒド / 骨粗鬆症 / 予防 |
研究概要 |
本研究はアルコール代謝酵素の一つである、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)遺伝子の変異によって惹起される骨粗鬆症の予防法の確立を目的とする。原因物質の効率かつ効果的な除去や骨形成の機能を亢進する機能性分子を探索し、有用な機能性分子の経口摂取によって骨粗鬆症への効果を評価すると同時に機能性分子の作用機序の解明を行う。 現在までの研究で、ALDH2の遺伝子変異による有意な骨密度低下は血中のアセトアルデヒド濃度の上昇や骨芽細胞中の過酸化脂質である、4-ヒドロキシノネナールの蓄積にあることをモデル動物を用いた実験によって見出した。また、MC 3T3-E1を用いた実験ではアセトアルデヒド存在下における破骨細胞及び骨芽細胞への分化効果を検討し、破骨細胞ではアセトアルデヒドによる著しい破骨細胞形成能の変化がみられなかった。一方、骨芽細胞においては分化マーカーを示す遺伝子やタンパク質において有意な発現量の低下を認め、分化形成を抑制することを明らかにした。 そこで、骨芽細胞の分化抑制を回復することが可能な抗酸化剤についての検討を行った。結果、数種類の水溶性及び脂溶性抗酸化物質が著しく骨芽細胞形成能を回復する効果のあることを細胞形態、分化マーカー遺伝子及びタンパク質の発現変化により確認した。また、ALDH2遺伝子変異マウスの骨髄細胞を用いた骨芽細胞の分化誘導実験でも同様の結果を示した。実際に細胞実験で有意な効果が認められた候補の抗酸化物質を用い、ALDH2遺伝子変異マウスへの経口投与を行ない骨密度の改善効果を検討した。検討の結果、骨密度の低下を回復することが可能な数種類の抗酸化物質を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画では、ALDH2遺伝子変異マウスを用いて細胞実験で有効であった数種類の抗酸化物質の経口投与を行ない、骨密度の低下を回復することが可能な抗酸化物質の有効性を確認した。研究の成果は途上であるため、学会等への報告は行っていないが、動物実験でも同様に良好な結果を得たことは有用な知見であり、今後さらにメカニズムの解明を行う必要がある。また、人間での応用に向けて有用な知見を得たといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は昨年度までの研究成果に基づいて、細胞及び動物への経口投与実験によって効果のあった抗酸化物質がアセトアルデヒドによる骨芽細胞分化抑制をレスキューする分子メカニズムを明らかにしていく。また、抗酸化物質を投与した動物の血清及び血漿中の脂質の解析についても北大の神先生の助言を受けながら実際に研究を進めていきたいと考える。抗酸化物質の効果による原因物質の発現変化やアセトアルデヒドによってもたらされる骨密度低下とレスキューの効果における分子メカニズムに対する知見を得て、最終的には論文や学会にて発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画自体には変更はないが、実験動物等の搬入による飼育費等の維持費に関して予算を計上していたが、予定よりも動物の数量が少なかったために金額に変更が生じた。 次年度分に動物実験の際に採取したサンプルの解析に使用予定であり、解析では次年度使用予定金額に合わせた金額での解析を必要とする。
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