• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

低マグネシウム血症に伴う心血管機能不全はマグネシウム補充療法によって改善するか?

研究課題

研究課題/領域番号 24614015
研究機関順天堂大学

研究代表者

渡邉 マキノ  順天堂大学, 医学部, 准教授 (00255655)

研究分担者 家崎 貴文  順天堂大学, 医学部, 准教授 (10348956)
キーワードマグネシウム欠乏 / 低マグネシウム血症 / 虚血再灌流障害 / 心筋保護 / ミトコンドリア透過性遷移孔(mPTP) / TRPM7チャネル
研究概要

昨年度の研究では慢性的Mg欠乏モデルを作製がうまくいかず、予定していた実験まで到達できなかったが、今年度、基礎飼料を変更し作製し直した。飼料中のMg含有量は対照食85.3 mg/100 g、Mg欠乏食4.5 mg/100 gであった。この飼料を雄性SDラット(5週齢)に8週間与えたところ(Mg欠乏群)、重篤な低Mg血症と貧血が引き起こされ、血圧の上昇が確認された。
Mg欠乏群の心機能については、摘出灌流心モデルでは心拍数、左室発生圧とも正常群よりも低く、低酸素灌流-再酸素化後の心機能の回復率も対照群と比して著明に低下した。
心筋よりミトコンドリアを単離し、ミトコンドリア透過性遷移孔(mPTP)の開孔を誘発するのに要するCa2+量を検討したところ、Mg欠乏群では対照群より少量のCa2+によってmPTPが開孔することが明らかになり、摘出灌流心モデルにおける低酸素-再酸素化障害の悪化はミトコンドリア機能の低下によるものであることが示唆された。
我々は正常ラットにおいて低酸素下で細胞外Mg濃度を12 mMとすると心筋保護効果が得られ、この保護効果にはミトコンドリアKATPチャネルが関与することを見出している。この高濃度Mgによる心筋保護効果がMg欠乏群でも認められるかを検討したところ、正常群における心筋保護効果と同等レベルの保護効果が得られることが判明した。しかしこの保護効果は正常群とは異なり、ミトコンドリアKATPチャネルは関与していないことが明らかになった。
またMg欠乏群の心室筋細胞を単離し、細胞外からのMg2+流入路を検討したところ、正常群とは差がなく、TRPM7チャネルを介していることが判明した。
これらの結果は、Mg2+欠乏により心筋ミトコンドリア機能は障害されているが、細胞膜のチャネル機能は残っていること、細胞内のMg2+濃度を高く保つことで心筋を保護できることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

基礎飼料を変更し慢性的Mg欠乏ラットを作製したところ、本研究を立案する基礎となった慢性的Mg欠乏マウスと同等の心機能低下が認められ、実験を進められるようになった。
単離心筋およびmPTP開孔実験については、前年度のうちに予備実験を開始し、サンプルの単離条件、細胞内Mg2+濃度の測定条件やmPTP検出条件がほぼ確定していたため、順調に遂行することができた。
また本研究の最終目標であるマグネシウム補充に関しては、補充期間はほぼ確定した。

今後の研究の推進方策

慢性的Mg欠乏ラットに対するMg補充療法の有効性を検討する。今年度の予備実験により、基礎レベルの心機能の回復は認められないが、低酸素-再酸素化障害の回復率は正常群と同じレベルまで改善される傾向が見られるため、さらに検討を進める。また高濃度Mgによる心筋保護効果の有無と、心筋保護効果が認められる場合にはミトコンドリアKATPチャネルの関与の有無を検討する。
今年度の研究で、Mg欠乏群における高濃度Mgによる心筋保護効果のメカニズムが正常ラットとは異なることが示された。つまりMg欠乏群ではミトコンドリア機能が低下していても細胞外から流入したMg2+によって心筋を保護することができることが示唆された。これは細胞外から流入したMg2+が心筋保護に関係するキナーゼやシグナル系を直接活性化している可能性を意味している。今後は心筋保護に関するシグナル系へのMg2+の関与についても検討を進める。
血管機能の検討については、血圧(テールカフ法)および冠動脈圧の初期値に差が認められたが(正常群<Mg欠乏群)、摘出大動脈標本における収縮・弛緩反応には著明な差は認められなかった。今後は腸間膜動脈などの微小血管を用いて収縮・弛緩反応を再検討する。

次年度の研究費の使用計画

研究の進捗は順調だが、Mg欠乏飼料の作製業者を変更したことにより、当初の予定よりコストがかかっている。平成26年3月の日本生理学会大会(鹿児島)に参加・発表するための旅費を計上していたが、科学研究費では旅費を全額を支出できないため、学内の研究費からの支出に変更した分、当該の次年度使用額が生じた。
Mg補充療法の実験が本格化し、学内動物施設における飼育期間が長期間になることから、当該研究費はMg欠乏飼料の作製および学内施設における動物の飼育・管理料に使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 低酸素下における心筋細胞内マグネシウムの維持機構2013

    • 著者名/発表者名
      華藤恵美、中村京子、家崎貴文、岡田隆夫、代田浩之、渡邉マキノ
    • 雑誌名

      順天堂醫事雑誌

      巻: 59 ページ: 260-266

    • 査読あり
  • [学会発表] Mechanisms of cardioprotective effects of high concentration of magnesium on hypoxia/reoxygenation injury in chronic magnesium deficient rat heart are differ from normal rat heart2014

    • 著者名/発表者名
      Makino Watanabe, Kyoko Nakamura, Megumi Kato, Ryo Kakigi, Takafumi Iesaki, Takao Okada
    • 学会等名
      Experimental Biology 2014
    • 発表場所
      San Diego Convention Center
    • 年月日
      20140426-20140430
  • [学会発表] Mechanisms of cardioprotective effects of high concentration of magnesium on hypoxia/reoxygenation injury in chronic magnesium deficient rat heart are differ from normal rat heart2014

    • 著者名/発表者名
      Makino Watanabe, Ryo Kakigi, Takafumi Iesaki, Takao Okada
    • 学会等名
      第91回日本生理学会大会
    • 発表場所
      鹿児島大学郡元キャンパス
    • 年月日
      20140316-20140318

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi