研究概要 |
昨年度、マウスの樹状細胞には放射線照射耐性があること、また、腸管膜リンパ節の細胞にX線を照射して1日培養した時、CD11c陽性樹状細胞における共刺激分子の発現が増加することが分かった。今年度はさらに、マウスから採取した腸管膜リンパ節の細胞に、0rad, 500rad, 1000rad, または3000radのX線を照射し、培養せずに直ちにCD11c陽性樹状細胞におけるCD40, CD80, CD86といった共刺激分子の発現について調べた。その結果、3000rad X線を照射したCD11c陽性樹状細胞において、CD80の発現の著しい増加が観察された。このことより、樹状細胞にX線が照射されると、その直後から樹状細胞の活性化が起こることが示唆された。 一方、マウス小腸の上皮細胞は放射線感受性が高くて照射によって死滅しやすいこと、および上皮細胞のみを他の細胞の混入なしで分離・採取することは、技術的に困難であることも昨年明らかになった。そこで今年度、Satoらの報告(Nature, 2009年)に従い、マウスの小腸のクリプトから腸幹細胞を採取し、マトリゲル中において3次元培養し、上皮細胞のみから成るクリプト-絨毛類器官を構築することを試みた。結果として、クリプト-絨毛類器官の培養システムを確立することに成功した。現在、この上皮器官を放射線照射した場合、樹状細胞など様々な免疫細胞にどのような影響を与えるかを検討中である。 また、大学の学生などを対象に質問調査を行い、2011年3月の福島第一原子力発電所事故前後のアレルギーの発症や進行について調べた。現在までの結果では、事故前後で発症や進行に特に有意な差は観察されていない。次年度もこの調査は継続して行う。
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