研究実績の概要 |
本年度の研究結果から、ビタミンCはヒト膵臓癌細胞株MIA-PaCa-2を用いたin vitro, およびマウスxenograftモデルの評価により、酸化ストレスを介して細胞死を誘導していることが判明した。また、電子顕微鏡解析により、ビタミンC処理した癌細胞内には細胞内オルガネラを取り囲むオートファゴソームが検出され、オートファジーを誘導している事が判明した。さらにビタミンCはオートファジーを介してヒト膵臓癌細胞に対して細胞死を誘導していた。現在、これらの結果は国際雑誌に投稿中である。 これまでの研究から不飽和脂肪酸 (PUFA)はヒト膵臓癌細胞を移植したマウスxenograftモデルにおいて癌細胞の増殖を有意に抑制する事が示された。また、in vitro実験系においてPUFAは酸化ストレスを誘導し、癌細胞に細胞死を誘導する事が示された。PUFAも癌細胞に対してオートファジーを誘導していた。そこでin vitro実験系において、オートファジー特異的阻害剤あるいはBeclin1 siRNAのトランスフェクションでオートファジーを阻害すると、PUFAが示す抗腫瘍効果は増強される事が明らかとなり、PUFAが誘導するオートファジーはアポトーシスを阻害している事が示された。この結果は国際雑誌に掲載された。 研究期間全体を通じた本研究により、食品含有成分ビタミンCやPUFAにより癌細胞に酸化ストレスを誘導しオートファジーが誘導されることが判明した。特にビタミンCによるオートファジーは細胞死誘導に作用し、今後、癌細胞特異的に細胞死を誘導するTNF-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL)と組み合わせる事によりTRAILが誘導する癌細胞特異的な細胞死誘導効果を高め、副作用のない治療法となり得る事が期待される。
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