基礎疾患を有する患者(糖尿病)からの脂肪由来間葉系幹細胞の特性について、健常者からの脂肪由来間葉系幹細胞との間において比較検討を行った。本研究では、糖尿病疾患を有する患者において、創傷治癒能の低下が指摘されており、各組織における治癒において重要な役割を担っていることが指摘されている間葉系幹細胞の性質を健常者からの脂肪由来間葉系間脂肪と比較することにより、その原因について解明することを目的として研究を遂行した。本研究から得られた成果は、糖尿病疾患を有する患者の創傷治癒に臨床応用することが予想されることから、その社会的意義はきわめて大きい。 インフォームドコンセントが得られた健常者ならびに糖尿病患者より、脂肪組織を回収し、間葉系幹細胞を抽出し、以下の比較解析を行った。1)細胞形態、2)細胞表面マーカー、3)細胞増殖能、4)細胞分化能、5)分化細胞における分化系列特異的な遺伝子発現解析、6)低酸素応答性、7)創傷治癒モデルマウスを用いた間葉系幹細胞のin vivo機能解析。 上記、1)および2)において両者間において差は見られなかった。3)においては、低酸素条件下においてのみ、糖尿病患者からの脂肪由来間葉系幹細胞において、7日目以降、過剰な細胞接着により計測不能となることが分かった。また、4)については、糖尿病患者からの脂肪由来間葉系幹細胞において、脂肪分化が促進することが分かった。この点については、脂肪分化に特徴的な因子の早期発現が認められた。7)については、糖尿病患者からの脂肪由来間葉系幹細胞を移植した場合、健常者由来の移植した群と比較して、治癒にかかる日数が有意に遅延することからも、原因となる因子の解明を今後進めていくことが今後の課題である。
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