研究概要 |
ヒト胚性幹(ES)細胞を用いた正常発生に沿った心筋分化誘導モデルをもとに、心筋前駆細胞の単離同定を試みた。GSK3インヒビターとNoggin添加によって誘導した5日目の細胞集団について、242種の細胞表面マーカーをスクリーニングし、7つの候補マーカーを同定した。その中でCD140bおよびCD141の組み合わせで得られる3つの細胞集団の中で、特にCD140bhigh,CD141pos集団で心筋細胞が濃縮されることを明らかにした。CD49fおよびCD184の組み合わせで得られる2つ細胞集団においては、CD49fhigh,CD184neg集団からのみ心筋細胞が誘導されることを突き止めた。これらの結果から、分化誘導5日目の細胞集団中に心筋前駆細胞が含まれることを明らかにした。 次に、この心筋前駆細胞の多分化能性を検討するために、CAGプロモーターによってGFPを発現するヒトES細胞を用いて、CD49fhigh, CD184neg集団についてFACSを用いてシングルセルソーティングを行い、GFPを発現しない細胞集団の中で心筋分化を試みた。その結果、1GFP陽性細胞からの心筋分化誘導率は平均10%であり、そのうち心筋細胞だけが分化誘導されたケースは1.2%であった。このことは、CD49fhigh, CD184neg集団中に含まれる心筋前駆細胞は多分化能性を有していること強く示唆している。 また、心室筋を単離するためにMlc2v-mCherryヒトES細胞株を作成した。現在この細胞株を用いた分化誘導を行い、心室筋の分化誘導過程を追跡可能か検討している。
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