研究課題/領域番号 |
24615005
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
木村 重美 熊本大学, 生命科学研究部, 准教授 (60284767)
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キーワード | 筋ジストロフィー / 副甲状腺ホルモン / 副甲状腺ホルモンレセプター / 筋衛星細胞 / 筋分化 / MyoD / 休止期 |
研究概要 |
Duchenne型筋ジストロフィーは、現在のところ根治治療はない。我々の目的は、筋分化を促進して筋ジストロフィーを治療することにある。以前、我々はTet-Offシステムを利用して、ドキシサイクリン(Dox)を除去することにより、MyoD遺伝子を発現させることのできるマウスES細胞(ZHTc6-MyoD)を作製している。そのZHTc6-MyoDは、培養液よりDoxを除去しても、すべての細胞が筋分化するわけでなく、一部の細胞は筋衛星細胞の休止状態と同じ様に未熟の状態を保ちコロニーを形成する。ZHTc6-MyoDと分化誘導したZHTc6-MyoDのコロニーを網羅的DNAareiにより比較検討した結果、副甲状腺ホルモンレセプター1(PTH1R)がZHTc6-MyoDのコロニーでは高発現を示した。ZHTc6-MyoD の筋分化の過程でsiRNAによりPTH1Rを発現抑制すると、多くの細胞は死滅した。また、ZHTc6-MyoDの分化培地に副甲状腺ホルモン(PTH)を入れることにより、マイオチューブになる期間が2日間短縮された。筋ジストロフィーのモデルマウス(mdx)の筋組織では、PTH1Rの発現が筋衛星細胞とほぼ一致して見られた。60μg/kgのPTHをmdxに毎日注射した結果、ハンギングテストでは生食投与mdx(n=7)では49.5±44.9秒、PTH投与mdx(n-6)では132±61.6 秒、100分間のトレッドミル検査では正常マウス(n=5)で1486±7.4 m、生食投与mdxでは425±190 m、PTH投与mdx(n-6)では843.6±352 mと、PTH投与群は有意の差をもって筋力の改善をみた。よって、PTHは筋分化を促進して、筋ジストロフィーなどの筋疾患に有効な治療法の1つである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in Vitroおよびin vivoにおいて、副甲状腺ホルモンが筋分化を促進することを証明した。平成25年度は熊本大学と特許を申請しており、学会発表、論文の公開ができなかった。しかし、ようやく特許に関しては、既に出願済みの状態となり、今後、論文の公開や学会での発表をすすめていきたい。平成25年度は海外などでの学会発表を予定していたが、以上の理由で出来なかった。また、委託研究も業者が受付を延期しており、その分の予算も残ってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
副甲状腺ホルモン(PTH)が、どのようなパスウェイで筋分化を促進しているのかを研究してくと同時に、筋ジストロフィーの治療にPTHが臨床応用可能かどうかについての検討をすすめる。具体的には、新たな予算を獲得して、以下のことを予定している。 1、副甲状腺1型受容体のコンディショナルノックアウトマウスの作製(ノックアウトマウスは胎生致死) 2、上記のマウスを使用して、副甲状腺がどのような経路で骨格筋の分化に関わっているのか解析する。 3、臨床応用に向けて、医師指導治験、もしくは製薬会社との共同研究をを模索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際学会や国内学会でで発表予定であったが、特許申請中であり、発表が出来なかった。また、委託研究(FACS)が受付が一時延期となっており、その分の予算が残ってしまった。 今年度は、この研究を国内外で発表、または論文公開を予定している。本来予定していた追加の研究(FACS)を行いたい。
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