研究課題/領域番号 |
24615006
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
花岡 和則 北里大学, 理学部, 名誉教授 (40189577)
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研究分担者 |
北本 武郎 北里大学, 理学部, 助教 (20453516)
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キーワード | 筋肉 / 筋再生 / 筋成長 / Lbx1 / Notch3 / ノックアウトマウス / サテライト細胞 / 幹細胞 |
研究概要 |
Lbx1は、胎児期における筋芽細胞の移動を制御することにより四肢骨格筋の形成に関与するホメオボックス型転写因子としてよく知られている。 我々は、このLbx1が胎児期の筋芽細胞だけでなく成体の骨格筋細胞、特に筋幹細胞 (サテライト細胞)でも発現し、傷害を受けた筋肉の修復 (筋再生)に重要な機能を果たしていることを報告してきた。本年度は、出生後の筋成長期におけるLbx1の機能について、Lbx1 コンディショナルノックアウト(CKO)マウスを利用した詳細な解析を行った。まず初めに、出生後のすべての筋成長段階の骨格筋においてLbx1が発現しており、特にサテライト細胞で強く発現していることを確認したうえで、出生後24時間以内にtamoxifenを投与したCKOマウスの表現型を解析した。その結果、4週齢以降のCKOマウスの筋肉では細い筋線維が増加していることが観察され、平均筋線維断面積および筋重量が対照マウスに比べて顕著に減少していること、すなわちLbx1のKOにより筋成長が阻害されていることが明らかになった。また、サテライト細胞特異的マーカーを用いて前脛骨筋におけるサテライト細胞数を測定した結果、CKOマウスの筋肉では対照マウスに比べてサテライト細胞が顕著に減少していることが明らかになった。さらに、増殖中のサテライト細胞数を計測したところ、細胞増殖マーカー陽性のサテライト細胞がCKOマウスでは減少していることが判明した。また、サテライト細胞の減少に伴い、細胞分化・融合マーカー陽性の細胞数も減少していた。これらの結果から、1) Lbx1は筋再生だけでなく、出生後の筋成長にも重要な機能を持つこと、2) このLbx1の機能は、筋成長過程におけるサテライト細胞の増殖を活性化することによるものであることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出生後の新生児における筋成長過程においても、筋再生過程と同様に、Lbx1は筋幹細胞であるサテライト細胞の増殖を正に制御していることが明らかになった。本研究の結果は、ほとんど研究がなされていない筋成長の分子メカニズムを解明する上で重要な知見であると考えられ、十分な成果が得られたと思われる。サテライト細胞を制御しているNotch3 遺伝子との機能的相関についての解析は今後の解析として残されている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果をもとに、筋成長・筋再生過程におけるサテライト細胞の機能についてLbx1コンディショナルノックアウトマウス、Notch3ノックアウトマウスのさらに詳細な解析を行うことにより、筋再生・筋成長におけるサテライト細胞の増殖制御のメカニズムを解明する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度、早々に使用計画のある薬品の購入に支出予定のため残額とした。なお、本研究には必要な消耗品等が含まれる。 本研究に必要な消耗品などの購入、本研究に関連した学術論文の出版および作成したノックアウトマウスのクリーニングや凍結保存に必要な費用として使用する予定である。
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