研究課題/領域番号 |
24615007
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研究機関 | 藍野大学 |
研究代表者 |
中野 法彦 藍野大学, 再生医療研究所, 准教授 (40322721)
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研究分担者 |
井出 千束 藍野大学, 医療保健学部, 教授 (70010080)
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キーワード | 神経再生 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、骨髄間質細胞が脊髄損傷の神経再生にはたらく有効因子の分離・精製を行った。 Sprague-Dawley (SD) ラットから採取した骨髄間質細胞の培養上清から、これまでに開発した神経突起伸長アッセイ法を指標にして、液体クロマトグラフィーを組み合わせて、神経再生の有効因子の精製を行った。ヘパリンアフィニティーカラム、イオン交換カラム、ゲルろ過カラム、逆相クロマトグラフィーなどのカラムを組み合わせて分離精製を行った。一連のカラムワークにより得られた精製標品は、直接またはトリプシン処理した後MALDI‐TOF MSまたはLC‐MS/MSなどを用いて同定を行った。これまでにいくつかの既知の神経再生因子を同定してきたが、これら以外にもいくつかの有効因子の候補があるので、引き続き精製を行ってきた。使用するカラム、精製条件などの検討を重ねて、主要な有効因子の精製度がかなり上がってきた。 また、神経突起伸長アッセイ法に一部改良点が見つかったため、検討を重ねて、より高感度で再現性が高い方法に改善することができた。 骨髄間質細胞をはじめとする体性幹細胞は神経や他の臓器の再生に重要な役割を果たすことが明らかになってきているが、その分子的なメカニズムはまだ明らかになっていない。本研究により、骨髄間質細胞の分泌因子を分離精製し神経再生に関わる因子が徐々に明らかになってきていることは、注目に値することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神経突起伸長アッセイ法の改良により、神経再生因子の分離精製を効率よく進めることができるようになった。 神経再生の有効因子の同定は、液体クロマトグラフィーの組合せによる精製により行うため、当初より多大な時間と労力を要することが予想されていた。その中で神経突起伸長アッセイ法を指標にして分離・精製をおおむね順調に進めることができたと考えている。しかし、精製度は高まってきたものの主要な分子の同定には至っていないため、当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の大部分を有効因子の分離精製および同定の作業が占めることになる。したがって、引き続き、神経再生因子の精製・同定に注力する。これまでの研究により、培養上清の条件、カラムの種類、分離条件などのデータが集まってきているので、これらをもとにさらなる同定作業を進めて行く。 得られた因子に関しては、リコンビナントタンパク質を用いて、神経細胞への効果を神経突起の伸長と細胞数の増減について測定し、受容体特性や情報伝達系を免疫沈降法にて明らかにする。 培養神経細胞に対して効果が見られた因子は、脊髄損傷モデル動物に投与実験を行う。有効因子を脊髄損傷ラットの静脈、髄液または損傷部位に注入して、BBBスコアによって行動評価を行い、免疫組織学的解析によって神経細胞やグリア細胞の再生あるいは生存状況について調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
分離精製に注力したため、有効因子の神経細胞への効果の解析が計画より少なくなった。その解析に用いる計画であった試薬類の費用を次年度に繰り越す。 使用予定であった試薬類の費用に用いる。
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