研究課題/領域番号 |
24615008
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
宮本 修 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00253287)
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研究分担者 |
氷見 直之 川崎医科大学, 医学部, 助教 (70412161)
岡部 直彦 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30614276)
成田 和彦 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60104808)
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キーワード | 嗅粘膜 / 神経幹細胞 / 嗅神経鞘細胞 / 移植 / てんかん / パーキンソン病 |
研究概要 |
1.嗅粘膜上皮層と固有層に存在する幹細胞特性の比較:8週齢ラットの上皮層からの細胞を培養し、神経幹細胞のマーカーであるNCAMやネスチン陽性を確認後、ニューロン用培地に置換してさらに培養を続けることで若い神経細胞のマーカーであるTuj-1陽性細胞を得ることが出来た。一方、固有層には幹細胞よりも嗅神経鞘細胞(OEC)や間葉系細胞が多く存在しており、OECの採取に適することが分かった。培養条件を検討し、コンフルエントの70%までOECを増やすことができた。OECは神経栄養因子を分泌し、軸索伸展作用を有するグリア細胞であり、神経細胞と一緒に移植することで移植細胞のホスト組織への生着を促進する可能性がある。 2.ドーパミンやGABA系ニューロンへの分化方法の開発:嗅粘膜上皮層から得た神経幹細胞にBDNFおよびGDNFを作用させることで、数は少ないがドーパミン系ニューロンのマーカーであるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)/Tuj-1陽性細胞への分化が確認された。一方、GABA系への分化については栄養因子添加などの培養条件を検討したが、GABA系ニューロンのマーカーであるグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)陽性細胞はほとんど得られなかった。 3.疾患モデル動物作製と移植:黒質から線条体へのドーパミンニューロン神経路である片側内側前脳束を6-ヒドロキシドパミンによって破壊したパーキンソンモデルラットを作製した。このラットの線条体に、GFPラットの嗅粘膜上皮層から作製したニューロンを障害側線条体に10万個移植した。移植後4週間してアポモルフィン誘導回転数の測定を行ったが移植前と比べて有意な改善はなかった。また、移植1ヶ月後の脳組織には移植細胞の生着がほとんど見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
嗅粘膜上皮層から神経幹細胞を培養しニューロンに分化させることには成功したが、そこから十分量のドーパミン系およびGABA系ニューロンに分化させることができていない。胎児細胞や嗅球の組織ではなく、本研究では成獣の末梢組織である嗅粘膜を使用していることが影響しているのかもしれない。十分量の移植細胞が得られていないため、疾患モデル動物を使った移植実験が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
1.移植用細胞の作製 嗅粘膜上皮層から採取した幹細胞にbFGF-8などを作用させて中脳の前駆細胞に変化させ、さらにこれにBDNFとGDNFを作用させ、十分量のドーパミン系細胞を得ることを試みる。GABA系細胞については幹細胞にNoggin処理をして分化を促進する。 2.疾患モデル動物への移植 ドーパミン系あるいはGABA系に分化させた細胞とOECを共移植して、移植細胞の生着を図り、移植効果について検討する。あるいは、神経幹細胞(NCAM/ネスチン陽性)の時点で疾患モデル動物にOECと共移植し、ホストの環境で機能性細胞に分化するかどうかを検討する。 3.効果の機序の検討 移植細胞の生着の状態を光顕や電顕レベルで形態学的に観察する。また、移植前後で脳内ドーパミンやグルタミン酸などの神経伝達物質の分泌量を測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度予定の国際学会への参加を行わなかったので旅費支出が当初の予定より少なくなったため。 次年度の研究費の使用は主に実験動物、培養用試薬、抗体などの消耗品であり、今年度の残高81,674円についてはすべて消耗品費に組み入れる予定である。
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