研究課題/領域番号 |
24616005
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村上 靖彦 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (30328679)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 看護 / 質的研究 / 現象学 / インタビュー / 訪問看護 / 小児がん |
研究概要 |
平成24年度は6名の看護師と1名の医師へのインタビューをお一人1~2回ずつ行った。前年度行ったがん看護、透析室看護に引き続き、訪問看護や小児がん看護あるいは東日本大震災で援助活動を行った方たちなど、より広い領域で死生観が問われる実践現場で従事する方たちにお話を伺うことができた。 インタビューデータについては逐語録を起こし、現象学の手法を用いて分析している。また、参考資料として哲学や看護・介護を中心とした文献を購入し研究している。 内容的には、患者の死に直面する際のケアのあり方のみならず、患者自身の主体化を目指しながら患者と共存する看護業務のあり方、あるいは看護実践が持つ特異な時間構造など、いままで話題になりにくかったさまざまな側面が浮かび上がってきている。 また、前年度に行ったインタビュー調査の分析結果と合わせて、海外での学会発表・研究発表4回を含む数回行い、また数本の論文を『臨床精神病理』誌やAnnales de phenomenologie誌など、海外及び国内の学術雑誌などに発表している。当研究とは間接的な関係(当研究の理論的な補強)になるが、フランスの哲学者レヴィナスに関する単著を出版した。 とくにこのような医療現場でとったデータを哲学論文として発表する作業は、海外の哲学研究の世界では稀であり、大きな関心を持っていただいている。 24年度にとったインタビューデータの分析はまだ途上であり、25年度以降も積極的に論文や口頭発表を行なってゆきたい。また、はじめに行った4人の看護師へのインタビュー分析については、25年度中に書籍にまとめて出版する予定である。残りについても出版して公にすることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・パイロットリサーチの頃から含めるとすでに10名以上の医療従事者にインタビューを行なっている。この点は予定通りである。 ・データ分析については、現在のところ6人分について、進行中である。この点も予定通りである。来年度はまだ手付かずのデータの分析に取り組み始めたい。 ・研究成果の発表に関しては、23年度と24年度を合わせて、10回以上の口頭発表を行い、数本の論文を出版しており、フランス語による論文もすでに2本出版済みでありこれからも発表される予定である。またここまでの中間成果を著作としてまとめる作業も順調に進行しており、今年度中に一回、単著としてまとめる予定であり、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
・すでに10人以上医療関係者にインタビューを行なっている一方で、分析は半分ほどのデータについて着手した。一人ひとりのデータを分析するために膨大な時間がかかるため、25年度以降はインタビューを新たに取る作業のペースは抑えつつ、ここまで行ったインタビューの分析を優先したい。 ・具体的には助産師へのインタビューを補完するとともに、震災支援に関わった医療関係者などへのインタビューを継続したい。 ・分析については助産師、精神科看護師、脳外科看護師、震災支援従事者の語りの分析を開始する。 ・文献に関しては今までは看護師の行為に焦点をあてたために、行為論の観点から調べていったが、今後はより死の問題に焦点を当てるために、生命論あるいは死生学に関する文献を重点的に読んでゆきたい。また、インタビューを取るなかで行為を促す偶然の出来事の重要性に気づいたため、出来事の哲学という観点から、考察を始める予定である。 ・24年度に行った海外の学会での研究発表への反応から、この研究を海外で発表することに重要な意義があることに気付かされた。これからも積極的に発表を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
・医療関係者へのインタビューを取りに行くための旅費そしてインタビューデータの整理費用に使用する予定である。 ・とくに海外での研究発表を行うための旅費を支出したい。さしあたり5月にベルギー新ルーヴァン・カトリック大学での学会および同大学の研究会で続けて研究発表する予定である。トゥールーズ大学の死生学研究プログラムにも研究発表のために参加の予定である。また研究調査のためにフランス(パリ第4大学)などに出張することを計画している。 ・生命論関係、死生学関係文献資料の購入を計画している。
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