本年度は、精神科病院と精神科訪問看護、精神科デイケア、ACT(地域包括型支援組織)でのフィールドワーク(参与観察とインタビュー)、看取りを中心とした訪問看護ステーションでのフィールドワーク、およびALS患者を介護するヘルパーへのインタビューなどを中心として行った。重度の障害や疾患を抱える患者の生と死の境界線に関わる実践について知見を深めている。 調査によって得られたデータについては、とりわけ精神看護と訪問看護について分析を進めている。たとえば病棟の規範の強い条件下で患者の自由を確保しようとするための実践、あるいは地域に置ける困難な生活条件のもとで患者の生活をいかにしてサポートするのかについての実践構造の細かい分析を行った。 研究発表としては、5月、7月、3月に、フランス、ベルギー、チェコの各国において講演、学会発表、セミナー開催など海外における発表を行い、また海外の雑誌や書籍における論文掲載を2件(プラス刊行決定が2件)、その他国内でも発表および論文掲載を行っている。日本においては、哲学関係の学会のみならず、看護師の学会や研究会、研修会に積極的に参加し知見の交換を図るとともに、現象学が現場の実践にとって有益であることを示すことができた。海外においては、類例がない研究であるために注目度が高い。まだ哲学研究者への研究の紹介が主であって医療者との交流はトゥールーズでのワークショップのみであったが、今後機会を捉えていきたい。
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