本研究の目的は、長寿文化や超高齢期のケア関係に関する日韓比較考察と、健康長寿事例の可視化にある。研究は、日韓の百寿者及びその予備群へのインタビュー調査の実施と、調査結果をネット空間やパンフレット等アクセシビリティの高い情報媒体によって広く発信していく方法で行った。具体的な取り組み内容・成果は以下の通りである。 研究最終年度は、山口県、韓国の釜山市と大邱市において百寿者・超高齢者(85歳以上)及び家族へのインタビューを実施した。併せて3ヵ年の研究総括を行った。日・韓・英の3言語によるパンフレットを制作し、日韓の長寿文化や超高齢期の支援関係、身近な健康長寿事例の可視化を図った。ホームページ(http://www.hwkimlab.com/ホップ-ステップ100歳時代/)を開設し、健康長寿の知恵、日韓の長寿文化の特徴とその背景についての紹介を始めた。ホームページからの発信は、健康長寿社会の実現に求められるあらゆる年齢層の連帯を呼びかけるねらいがある。 研究の意義としては、まず、多様な地域・年齢層の人が気軽にアクセスできる情報媒体を用いて、健康長寿の具体例に注目、発信したことである。長寿者の自律性、家族の長寿認識や支援関係、健康長寿のための個別実践例を広く紹介していくことで、身近なロールモデルによる肯定的な長寿文化の形成が期待できる。次に、日本の高齢社会経験知に対する期待、共有ニーズが確認できたことである。韓国では急激な人口の高齢化・親子関係の変動とともに支援体制の混乱がみられ、さらには長命を否定するような考えや行動も一部観察された。同様の状況が他のアジア地域でも予想されるなか、類似した社会文化背景をもつ日本の先行経験知、とりわけ長寿者の自律性や長寿認識、健康行動などは具体的、実践的な情報として有効である。以上の成果は、他のアジア地域へと研究連携を広げていく土台として活用できる。
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