研究の最終年度である当該年度においては、1.親の離婚を経験した子どもたちへのインタビュー調査による質的研究の最終的なまとめ、2.学校教育現場で子どもたちにかかわる教員らへの質問紙調査・インタビュー調査の最終的なまとめ、3.離婚移行期にある子どもや家族に対するケア・プログラム日本版(FAIT ; Family In Transition)の地方公共団体における試行実践などを行い、以上の具体的研究や活動に関する学会発表や研究論文作成を行った。 また、研究代表者や研究協力者らが関与する小学校や中学校における教員研修、教育相談担当教員や養護教員のための研修会、家庭裁判所調査官や調停委員のための研修会等において、本研究結果に即した啓蒙的活動を行った。 本研究により、親の離婚や長引く夫婦間葛藤がなどの一連のプロセスが、どのように子どもたちの心理社会的困難につながってゆくのかが明らかにされたとともに、そこからの子どもたちの回復プロセスの実際、および、いかなる要因が子どもたちのリジリエンスや回復のための資源になりうるのかが詳細に分析、考察された。 一方で、子どもたちの主たる支援資源である学校教員らの認識としても、親の離婚を経験している子どもたちに対するケアの必要性を実感しており、実際、志ある教員の熱意や思いやり、個人的なかかわりに助けられている子どもたちは少なくないが、学校システム全体の問題として、子どもたちの心理社会的困難の実情やニーズが共有されていないという課題も示された。 結論として、本研究の知見は、子どもたちの支援にかかわる実践現場における具体的かつ効果的なケアや支援に活かされ、親の離婚を経験した子どもたちのケア・プログラムの立ち上げにも貢献したというという点で、意義あるものであったと考える。
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