研究課題/領域番号 |
24616026
|
研究機関 | 西南女学院大学 |
研究代表者 |
新木 眞理子 西南女学院大学, 保健福祉学部, 准教授 (20335756)
|
研究分担者 |
東 玲子 西南女学院大学, 保健福祉学部, 教授 (60184173)
|
キーワード | 祖父母的ジェネラティヴィティ / 要介護高齢者 |
研究概要 |
本研究は、要介護高齢者の祖父母的ジェネラティヴィティ発達を促すケアの開発を目的としている。初年度は、介護施設に入所の高齢者への面接調査によって、要介護高齢者の祖父母的ジェネラティヴィティの様相を明らかにした。ジェネラテイヴィティのなかでも、特に「世話する・世話される」関係に着目した。要介護高齢者は、一方的に世話されるのみならず、自ら周囲に関心を持ち、何らかの形で要介護高齢者のほうが「世話する」世界も確かに存在していた。ほぼ全介助を受ける高齢者であっても、限られた身体状況や環境のなかで、他者と交流し、メッセージを伝えることが可能であった。 要介護高齢者の語りは、直接的なジェネラティヴィティの開示というより、その語りのなかで、過去、現在、未来を行き来し、自らを固有の存在として実感し、それが周囲への関心や次世代への関心(ジェネラティヴィティ)に結びつくのではないかと考えられた。そこで、本年度はハイデガーの「存在と時間」における解釈学的現象学について、「語り」や「時間性」の概念等の理解を深め、それを看護実践に結びつけていくという方向をめざして、「語りと看護実践」研究会を発足させた。メンバーは教育研究者と現場の看護師で構成され、現象学の専門家の講義と実践現場からの話題提供、討議を行なった。 同時に、要介護高齢者の「語り」を聴くことがそのままケアに結びつくことが可能か、という課題をもって、研究施設の開拓を試みた。研究者が特別養護老人ホームを定期的に訪問し、複数の入所者にかかわり、「語り」を聴くという介入研究の糸口を探った。次年度に介入研究を開始する予定にしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度に要介護高齢者の「祖父母的ジェネラティヴィティ」の様相を明らかにし、本年度は介入研究に入る予定であったが、介入方法について考えていくために、ハイデガーの解釈学的現象学についての正確な理解が必要となった。専門家を交えた学習等に時間がかかり、介入研究の計画を立てるまでには至らなかった。この分野の介入研究に関する先行研究も少なく、実際に研究施設を選択して、ある一定期間介入するとなると、さまざまな点で、より慎重さが求められる。研究施設の選択に時間をかけ、現場のケア担当者とかかわりをもちながら、より良い研究成果が得られることをめざして、研究計画に至るまでに多くの時間を費やしたことは、一つの意味があったと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度の介入研究に当たっては、研究施設のスタッフと十分に連携して、研究参加者の安全を含めた倫理的配慮に努める、研究成果が、研究参加者の生活に何らかのプラスの効果があることをめざす。質的帰納的研究となるため、得たデータは、複数の研究者の協力を得て、結果の妥当性、信頼性の確保に努める。研究成果が、研究施設のケアの改善に結びつく糸口となるように、研究者は、研究期間中の職員との交流を積極的に図り、互いの意思疎通が円滑にいくように努める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度に介入研究を行なって、分析まで進む予定であったが、介入研究は次年度に行なうこととなった。そのため、分析に使う予定であった分析ソフトウェアの購入を次年度に回したため、上記の金額が未使用となった。 ・分析ソフトウェア、学会交通費及び参加費、論文の英文抄録チェック費用 ・図書費、研究施設への謝金、文房具
|