本研究は、要介護高齢者の祖父母的ジェネラティヴィティ発達を促すケアの開発を目的とした。初年度は、介護施設に入所の高齢者への面接調査によって、要介護高齢者の祖父母的ジェネラティヴィティの様相を示し、要介護高齢者の「世話する」世界の存在を明らかにした。次年度は、要介護高齢者の祖父母的ジェネラティヴィティに働きかけるケアを探るために、ハイデガーの解釈学的現象学を理論的前提に置いたケアのあり方を追究した。その一つの方法として、教育研究者と看護実践者が集う「語りと看護実践」研究会を発足させた。現象学の専門家の講義による現象学の理解と実践現場からの話題提供による討議を重ねた。同時に、要介護高齢者の「語り」を聴くことがそのままケアに結びつくことが可能か、という課題をもち、研究者が特別養護老人ホームを定期的に訪問し、複数の高齢者の「語り」を聴くという介入研究の糸口を探った。 最終年度では、ハイデガーの解釈学的現象学を基盤とした、特別養護老人ホームの要介護高齢者を対象とした調査研究を行ない、専門分野の学会交流集会において、「要介護高齢者の『気遣い』に着目した介入研究の可能性を探る」というテーマで発表を行なった。要介護高齢者の「語り」を継続的に聴く、という介入方法を紹介し、要介護高齢者の祖父母的ジェネラティヴィティの根底を成すものとしての「気遣い」の世界を示し、参加者との意見交換を行なった。研究成果を、「要介護高齢者の『気遣い』に着目した研究ー介護施設入所者の祖父母的ジェネラティヴィティの根底を成すもの」(仮題)として学会誌に発表予定である。 主な研究成果としては、要介護高齢者の「語り」を導き出すことそのものがケアにつながり、看護者がその「語り」を導き出すための「技」を発展させていくことが要介護高齢者の生の豊かさを高め拡げていくことが示唆されたことである。
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