研究課題/領域番号 |
24616027
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
村上 誠 常葉大学, 健康プロデュース学部, 教授 (30331606)
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キーワード | 保育空間 / 保育環境 / アクションリサーチ / 子どもとアート |
研究概要 |
本研究では、ケアされる側にある幼い子どもたちが本来どのような保育(生活)環境を望んでいるのかを、主にアートワークショップを通してリサーチし、そこで得られた知見に基づいて、最終年度に、望まれるべき保育空間を具体的な形で創り出してみようとするものである。2年目である今年度は、3つの方向から研究を進め、以下の成果を得ることができた。 1)保育環境を、〈環境〉ではなく〈空間〉として捉え、そもそも人間の空間意識はどのような様相を持つものであるのかを、異なる領域の専門家と対話し、出版物として公にした。中でも、夏目琢史(日本史学)との対話では、歴史用語であるアジール(避域)と保育空間の共通性を確認することができた。また、赤坂憲雄(民俗学)との公開対談では、東日本大震災に遭遇し死と向き合う子どもたちの姿から、生活空間に内包される〈死〉の問題について考える必要性を痛感させられた。 2)初年度から継続しているアートワークショップを今年度も愛知県美術館、浜松市内のH保育園・A幼稚園などで実践した。ここでは、アートの遊びを繰り返しながら幼児の空間意識をリサーチし、ワークショップを次のステージに移行するための実践も試みた。次のステージとは、子どもたちが自分たちで空間を創出する実践である。 3)これまでのリサーチの成果を日本保育学会及び美術館教育のシンポジウムで発表した。特に愛知県鑑賞学習普及事業委員会主催のシンポジウム『地域と美術館をつなぐ』では、ケアされる幼き者たちが、どのような遊び(生活)の空間を求めているのかを〈死と再生〉をキーワードに報告することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)当初の予想以上に多くのアートワークショップを実践することができた。 2)専門領域の異なる識者との対話では、アジール(避域)としての保育空間の有り方、また生活空間に内包される〈死〉の問題についての知見が得られた。 3)日本保育学会、愛知県美術館でのシンポジウムでは、多くの聴衆(保育、学校、美術館関係者)に、これまで保育学やケア学で触れられることのなかったアジールや保育空間と〈死〉の関わりについての問題提起ができた。 4)アートワークショップの実践では、小さな問題が次々に発生し毎回細かな修正を余儀なくされた。そのためそのことに少しエネルギーを使いすぎてしまい、具体的な保育空間の創作が若干遅れ気味となってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年となる平成26年度の活動は、おおよそ3つに分けられる。 1)アートワークショップに新たな展開を加える。子どもたちがカメラを持って自分たちの生活空間を撮影し、それを遊びの中で再構成するもの。彼らが、毎日の生活の中で何を感じ、何を見ているのかをリサーチする。 2)これまでのアクションリサーチで得られた成果を総合して、保育現場に入り子どもたちと一緒に保育空間を創作する。子どもの身体の尺度を基準に、また彼らの動き〈移動と休息〉に合わせて制作するが、最終的な形態は変容可能な仮設的空間となる予定。 3)これまでの保育実践をまとめ、平成27年5月の日本保育学会大阪大会で発表する。テーマ「新たな保育空間-移動と休息、そして変容」(仮題)。また、論文として勤務校紀要と学会誌に投稿する予定。
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次年度の研究費の使用計画 |
ワークショップ等の記録(映像・写真)を整理・処理していたパソコンがWindows XPだったため、急きょ新しいOSで、かつ多量の映像処理のできる高いスペックのパソコンが必要となった。そのため、次年度に購入できるように繰り越しをした。 映像・写真が処理のできる高いスペックのパソコンを購入する予定。
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