研究課題/領域番号 |
24617002
|
研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
西 兼志 成蹊大学, 文学部, 准教授 (20599550)
|
キーワード | メディア研究 / メディア文化 / アーカイブ / テレビ研究 / ドキュメンタリー研究 / 東日本大震災 |
研究概要 |
本研究は、デジタル技術によって現在、整備されつつある映像アーカイブ環境を全面的に活用することで、テレビを中心としたメディアについての文化学の提案、確立を目指すものである。特に、2011年3月に起きた東日本大震災をめぐる放送は、60年目を迎えようとするわが国のテレビを中心としたメディア文化のあり方を凝縮して提示するものであった。本研究では、震災関連番組を対象とし、アーカイブ化された番組群を詳細かつ具体的に分析すると同時に、現在のデジタル環境をめぐるメディア学、アーカイブ学の観点からメディアをめぐる文化学の確立を目指すものである。 25年度は、24年度に引き続き、震災関連番組をPCを用いて録画し、それらをハードディスクに保存することで、震災関連番組のアーカイブの構築を行った。また、1995年の阪神大震災について、VHSテープに録画された番組のデジタル化をおこなった。そして、それらの番組、特にNHKスペシャルなどのドキュメンタリー番組に注目し、映像解析ソフト「タイム・ライン Lignes de temps」を用いて分析、アノテーションをおこなった。 これらの放送番組を対象とした具体的な分析と並行して、フランスやアメリカにおけるメディア研究についての調査し、メディアによる表象が、いかにして「資料=ドキュメント」として構築されていくかについての理論的な研究をおこなった。また、震災だけでなく、大災害や大事故は、神話や宗教的な経験、民話などといった広く蓄積され共有されてきた記憶を再活性化し、それを明るみに出す機会となるが、それがこれまでどのようにメディアによっておこなわれてきたか、そして、現在のメディア環境では、どのようにおこなわれているかについての研究を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震災関連番組の録画、アーカイブ化の作業は順調に継続しており、また、それらの番組についての分析・アノテーションも進めている。これらの具体的な番組を対象とした作業および分析と並行して、メディア文化の理論構築に関しても、災害を経験した地域で蓄積されてきた伝統的な知や教えが、現在のメディア環境でいかにして再活性化され、表象されているかという点に着目し、欧米での研究状況を調査するなど順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度もまずは、過去2年間で行ってきた、震災関連番組のアーカイブ化および具体的な番組を対象とした分析、そして、メディア文化についての理論構築を継続していく。それと同時に、本年度は研究最終年度にあたるため、過去2年間に行ってきた研究成果の総合、完成を実現し、それを公開・発表するために、研究会、シンポジウムを企画・組織していく。また、成蹊大学『文学部紀要』や学会誌などを通じての公開・出版を行う。それに向けて、これまで行ってきた震災関連番組のアーカイブ化を基にした番組分析と、それと並行した行ってきたメディア文化についての理論構築というふたつの軸を総合することを目指す。映像解析ソフト「タイム・ライン Lignes de temps」や、概念ネットワークをヴィジュアル化する「トピック・マップ」といったデジタル・技術を、このような研究成果の総合だけでなく、その公開・発表にも活用していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
額が1万円以下であることもあり、研究最終年度に繰り越した。 最終年度に受領する研究費と合わせて使用する。
|