今年度は、これまでの二年度に続いて、震災関連番組を中心に番組アーカイブの構築を進めるのと平行して、アーカイブ化した番組群について、映像解析ソフト「タイム・ライン」を用いて、内容分析を行った。なかでも、「地図」や「証言」がどのように用いられているかという観点から分析を行った。 証言に関しては、たとえば、NHKでは2012年一月以来、『証言記録 東日本大震災』を、ミニ番組である『あの日 わたしは ~証言記録 東日本大震災~』とともにシリーズ化して放送している。あるいは、『東日本大震災 亡き人との“再会”~被災地 三度目の夏に~』は、新しい『遠野物語』とも言うべきものを紡ぎ出すものである。また、地図に関して言えば、携帯端末の位置情報を集積したビッグ・データを用いたCGによる地図(NHKスペシャル『震災ビッグ・データfile1~4』など)や、放射能の被害を描き出した地図(『ネットワークでつくる放射能汚染地図1~6』など)、あるいは、個々の被災者の証言を表したもの(『東日本大震災 巨大津波 その時ひとはどう動いたが』など)、さらには、古地図を今回の被災状況と重ね合わせる(『シリーズ 大震災発掘』など)を始めとして、さまざまな地図が作成され、提示されていることが明らかになった。 以上のようなこれまで放送された番組の分析から得られた知見を、これまで蓄積してきた、ジャンルの混淆――ドキュメンタリーとドラマ、ドキュメンタリーとバラエティーなど――をめぐる分析、また、戦争や災害などについて海外で製作されたドキュメンタリー映画についての分析、そして、それらについての研究についてのサーヴェイと合わせることで、現在のメディア環境・メディア文化をめぐる新たな理論を素描することを試みた。
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