海外各地での現地調査を実施し、現地の実態を知ることで初めて把握できる知見と、今後の研究の課題とが見えてきた。 最終年度に実施したのは、中国東北部の延吉(延辺大学講演会)、イタリア・シチリア島(エトナ・コミック大会招待パネリスト)、北京(北京動漫ゲームフェスティバル参加)、台湾(東アジア日本語日本文化学会報告)、ハンガリー・ブダペスト(欧州におけるマンガ・アニメ普及の最前線のひとつ)、およびインドネシア(ジャカルタ&スラバヤ)を訪問したこと、各地で現地調査をする以外に、講演会や報告を行ってこれまでの調査研究の成果を発信し、共有したことである。現在も進行形でマンガ・アニメの普及の続く地域で、現地のファンや、文化産業従事者や、研究者との情報意見交換を行い、再訪地域においてはこの間の状況変化を観察し、資料収集と整理を行った。これまでの国内外での調査研究で知己を得た人々との情報交流を継続することで、直接に訪問をしていない地域での実態情報のアプデートも行うことができた。 結論を要約して述べるならば、マンガとアニメとは、すでに21世紀の世界各地においては「デジタル文化」としてインターネットを経由して共有され消費される文化となっており、「デジタル・リテラシー」のないマンガ・アニマのファンはマイノリティであること、このマンガ・アニメのファン同士の間では「アニメ・コンベンションとしての共同体の祭礼」が定期的に開催され、オフ会として構造化されている。すなわち「文化のグローバル化・ローカル化・再グローバル化」は世界のデジタル文化を駆使する若者の生活一般において共有される基盤構造となっている。その一方でマンガ・アニメのメディア取材が流行ることで、専門ガイドのいる取材観光産業が成立し、インタビューには高額の謝金が要求される状況が生じ、調査や取材の方法と対象と成果の定式化が進行している。
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