研究課題/領域番号 |
24617013
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研究機関 | 苫小牧駒澤大学 |
研究代表者 |
石 純姫 苫小牧駒澤大学, 国際文化学部, 准教授 (60337102)
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キーワード | 朝鮮人の移住と定住化 / 重層的アイデンティティー / アイヌ民族 |
研究概要 |
近代期北海道における朝鮮人の定住化の過程には、アイヌ民族との深いつながりがひとつの要因であることを、これまでの調査から明らかになってきている。本研究の目的は、こうしたつながりのなかで形成されたマイノリティの重層性に注目し、従来のマイノリティ分析とは異なる視点から、日本社会・日本文化の多様性について新たな視点を展開することとした。 2013年度は、平取町を中心に札幌、苫小牧など都市部における聞き取り調査並びに文献資料と現地調査を進めてきた。この調査のなかで明らかになったことは、明治期から始まる徳島藩や稲田藩から日高地方への和人の移住とともに、朝鮮人が牛馬を扱う「馬喰」として、かなり早い時期に北海道日高地方へと移住しているというものである。これらの朝鮮人の一部は大正期から日高地方においてアイヌ女性と結婚し定住化していた。今年度は、鳴門市、淡路島洲本などでの聞き取り調査、文献資料収集を行った。 8月には、これまでの研究調査の成果を苫小牧駒澤大学において、第九回東アジア教育文化学会との共催で学術シンポジウム並びに東アジア表象プロジェクトとの共催によるフィールドワークを行った。また、東アジア教育文化学会ニュースレターの連載記事として、シンポジウムにむけての成果報告も行っている。シンポジウムとフィールドワークについては、北海道新聞、苫小牧民報などの報道機関によって、大きく報道された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三年間の研究調査は、平取町を中心に日高地方での聞き取り調査を基盤としているが、2013年度では、徳島県、兵庫県からの移住について調査を行った。これらの調査により、朝鮮人における新たな移住のルートも明らかになりつつある。 また、8月に開催された2013年度シンポジウム、フィールドワークは多くの参加者を得、マスメディアでの報道などによっても本研究調査の成果について広く社会に還元されたものと考える。 更に、徳島県、兵庫県での文献収集、聞き取り調査を通して、朝鮮の人々の移住の新たなルーツと共にアイヌの人々とのつながりの多様性も更に明らかになりつつある。 また、2014年3月末から4月にかけて、韓国済州島での調査は、済州島四・三事件による大量の朝鮮人の日本への移住を生み出している。その多くは大阪や東京三河島などへの移住が知られているが、北海道への移住との関連についても調査を進めている。 一方、近年社会的問題ともなってきている、一部の排外主義を標榜している個人による稚拙ではありながらも、極めて卑劣で悪質な誹謗中傷は、とりわけ重層的なマイノリティとしてのアイデンティティを有する人々にとって、極めて深刻な状況であることも見逃せないこととして浮上してきている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度2014年度は、本科研の最終年度であり、三年間の調査研究の総括と報告書の完成を目指すものである。 サハリンでの調査を予定していたが、必要性と時間的制約から、中止の方向を考慮中である。なお、聞き取りのなかで、調査の必要性が生じた場合には、当該地区での8月下旬の調査を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた聞き取り調査において、インフォーマントの方の都合がつかず、延期や中止になる場合もあり、謝金等が十分消化できなかった。 また、サハリンへの調査についても、必要性と時間的余裕において十分とはいえなかったことから、2013年度の実施を見送ることとなった。 最終年度にあたり、聞き取り調査で十分行えなかった地域やインフォーマントの方々に対し、聞き取りを行っていく。また、必要性に応じて、サハリンでの調査も行う。
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