「人生紙芝居」とは、生活史に基づいた手作り紙芝居であり、人生における重要な出来事の間の因果関係を示す簡潔な脚本を視覚的に提示する技法である。本研究では、中米・コスタリカにおいて、この心理教育的技法の開発に取り組んだ。実施対象はスラムに居住する移民、ストリートチルドレン、死別により抑うつ状態にある者などである。実践を重ねるなかで、この技法が人生において困難を経験している人々の心の回復に役立つことが明らかになった。 28年度は研究計画の最終年度として、(1)国際学会での研究発表、および(2)日本国内で人生紙芝居を実施するための準備を行った。(1)に関しては、27年度までの学会発表では人生紙芝居の一次的活用、すなわち生活史の語り手自身に対する効果を検討してきたが、28年度の発表では二次的活用、すなわちストーリーを通して一般の人々がマイノリティに対する共感的理解を促進させるかについて検討した。(2)に関しては、国内で障がい者の人生紙芝居を制作するための準備を行った。まず、人生紙芝居の一次的活用に向けて、障がい当事者および保護者の生活史を収集した。また、二次的活用に向けて、障害をテーマとする既存の絵本を使用し、障がい当事者および保護者を対象とした質問紙調査を実施した。国内での調査研究は当初計画の想定を超えているが、コスタリカにおいて確立してきた実施方法を修正しながら「人生紙芝居」技法を発展させる段階へ移行できたといえる。
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