研究課題/領域番号 |
24617015
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
金城 ふみ子 東京国際大学, 経済学部, 教授 (50275799)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 文化変容と言語 / 早川三代治 / 有島武郎 / 西欧語の日本語への影響 / 言語統制 / 治安維持法 / 社会科学的分析 / 分野による表現差 |
研究実績の概要 |
社会科学的分析における文章表現への西欧文化西欧語の影響を見るという目的のために、その研究の一部として、現在、早川三代治(1985-1962)の作品分析を中心に検討している。 早川三代治は、日清戦争が終った19世紀の末に内国植民地であった北海道小樽の地主の長男に生まれ、多感な中学生時代にホイットマン、有島武郎と出逢って文学活動を始め、後に知られざる文学者とも言われた作家でもあり経済学者でもある。長篇小説「土と人」は、昭和4年早春から昭和22年春まで(未刊の最終編の構想を含めると昭和34年まで)の北海道虹別原野の開拓民の生活を描いたものである。 小樽商科大学附属図書館所蔵の早川文庫の追贈資料(未整理)調査を行う中で、早川三代治の文学作品の原稿や創作メモ、それに関わる資料を閲覧することができ、早川の関心事や作品執筆の手順、交友関係の一端などが判った。 昨年度から行ってきた早川三代治の長篇小説「土と人」について、執筆意図、校正、出版の経緯について、時代背景を含めて背景考察と、政治機構の変動と文学作品の表現への影響などを論じ、本務校の論叢に発表した。早川の作品は、第二次世界大戦前および戦中に特高警察によって行われた検閲で一作品が発禁になったこと、戦後のGHQによる検閲でも日本人の検閲官が表現のchangeを提案していたこと、早川の作品にも検閲を意識した表現が見られることなど、早川がどのような時代に生きていたかが氏の文学作品から浮彫にすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(理由) 1.早川三代治の作品執筆資料が当初予想した以上に膨大であり、さらに追加寄贈が進行中なため、閲覧調査に時間を取られている。 2.資料整理に学生アルバイトを雇いたいが時給が安いため適当な人がみつからない。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、 1)小樽商科大学附属図書館所蔵の早川文庫の追贈資料(未整理)調査の継続、2)作品の内容分析および表現や構文の計量分析、3)現在行っている、早川三代治の<土と人>シリーズの第二部「処女地」における、代名詞、指示詞、連体詞、無生物主語の使用状況と、他の作品との比較、4)小樽商科大学附属図書館での調査結果のまとめとしての索引作成、5)有島武郎を早川三代治の作品の比較の試み。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に小樽商科大学附属図書館が長期工事で立ち入りができないため調査に行けず、調査旅費が執行できなかったため、その繰越金も使用して、本年度は、秋から毎月のように小樽商科大学に赴き、資料調査を行ったが、授業や大学の業務のため長期滞在日程ができず、次年度への繰り越し金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
小樽商科大学附属図書館での資料調査旅費、資料整理のための人件費、資料の購入費
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