明治以降の社会変動や厳しい思想言語統制期に文学作品及び社会科学分野の双方の文章を書いた経済学者早川三代治と文学の師の有島武郎の文章を対象に、社会文化と政治機構変動の日本語への影響について、社会思想・文学・学会活動や西欧語の特徴を小樽商科大学附属図書館早川文庫の資料調査や計量解析を含めて考察した、実証的な事例研究である。研究の結果、両者の文章の特徴は、特に文学作品では西欧語の影響、特に、無生物主語・擬人法・受身・代名詞・指示詞の多用傾向が顕著なこと、早川の北海道の農村の生活実態、地主としての農場解放の苦悩などが書いた文学作品と所得・資産分布の論文は、どちらも「貧困の実態」の静かな指摘である。
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