研究課題/領域番号 |
24617017
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
羽生 浩一 東海大学, 文学部, 准教授 (90433911)
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キーワード | ノーベル平和賞 / 広報外交 / ノルウェー / 冷戦 / 民主主義 |
研究概要 |
研究初年度の2012年度に引き続き、2013年度は研究調査および文献収集、読み込みなどを行ないつつ、さらに初年度から実施が次年度にずれこんでいたアメリカの国立公文書館等、および沖縄県立公文書館での海外資料・文献調査を実施した。 本年度の研究成果として、まずノーベル賞創設時、そしてそれ以前の欧州の人権、平和、民族意識、民主主義の思想の隆盛の流れのなかで、ノーベル財団所有の文献などをもとに整理してゆくなかで、ノーベル平和賞がその時代に創設されたことの意義、そしてそれから1世紀以上にわたって継続してきた理由について、具体的な考察、検証を試みることができた。こうした前史的な部分からノーベル平和賞をとらえようとしてきた研究はほとんどない。 また、アメリカの出張では、プロパガンダの専門家に研究の相談を仰ぐとともに、国立公文書館においては、本研究の具体事例の研究の一つの柱となる、1974年のノーベル平和賞について、その授賞理由となった沖縄返還および非核三原則にかかわる公文書を詳しく調べたところ、近年アカデミックまたはジャーナリズムの調査で明らかになっている「密約」について、これまでの研究や報道とはやや異なる角度からの見地が見いだせたことは、大きな成果であった。 研究成果の発表は2014年度に順次行っていくが、まず書籍として「ノルウェーを知る60章」(明石書店)のなかで、ノーベル平和賞についての項目を執筆、出版予定である。研究発表としていかに詳述するが、5月から6月にかけて、放送大学、早稲田大学の学術研究会での発表、大学の紀要等への発表を予定しており、日本への平和賞から40周年にあたる2014年度を意識して、年度後半期にはさらに論文や記事等の発表を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の最初の二年間は主に資料収集や文献読みこみ、考察などを行ってきた。研究を企図した際には含まれていなかった切り口や論点についても論考を深めるなかで、その分物理的な時間も必要となっているが、おおむね順調に進展している。ただし、予算申請時と比べて、円高が3割強進行した影響で、海外研究調査の実施などに影響が出ている。 昨年度には、前述にもあるが、初年度の課題の持越しであったアメリカの国立公文書館、沖縄県立公文書館などでの調査も実施でき、成果を上げることができた。ただし、資料・文献が膨大にあるため、その整理、読解にもかなり時間を取られている。その点を踏まえると、この三年間に達成すべき成果物として、内容を重視しながら、絞り込んでいくことも必要であろう。本研究を基盤とし、将来的な研究課題につなげたい。 現時点では、5月より少しずつ研究成果の発表が具体的に決まっており(次項目参照)、その発表に合わせて、研究の部分的な成果をまとめてゆく。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる2014年度は、研究成果をまとめ、研究発表会および論文、そしてジャーナルなどで積極的に成果を発信していく。 まず5月には放送大学の研究会で、授賞40周年にあたる今年を念頭に、佐藤榮作元首相のノーベル平和賞について新たに発掘した資料を基に研究発表を行い、6月には早稲田大学の20世紀メディア研究所の研究会で、ノーベル平和賞創設前史とその時代的な意味についての研究発表の予定である。こうした研究発表の成果は、東海大学文学部紀要、早稲田政治公法研究等での発表を順次予定している。 ノルウェーの広報外交にどのようにノーベル平和賞が位置づけられてきたか、などについては追加調査も含め、今年度の研究および後半期での発表課題としている。過去二年については比較的歴史的な検証部分に焦点を置いていたが、現代におけるノルウェーとノーベル平和賞に関する検証については今年度の研究の中心となる。
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