研究課題/領域番号 |
24617022
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
森 貴史 関西大学, 文学部, 教授 (10318743)
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キーワード | 比較解剖学 / 自然科学 / 顔面角理論 / 18世紀アカデミズム / ゲッティンゲン大学 / ブルーメンバッハ / カンパー |
研究概要 |
25年度も、夏期休暇期間の8月9日から19日までに渡独し、ゲルリッツ、ゲッティンゲンなどを中心に、18世紀の啓蒙主義や自然科学に関連する博物館や大学図書館を来訪調査した。くわえて、とりわけザムエル・トーマス・ゼメリング、ヨハン・フリードリヒ・ブルーメンバッハ、ペトルス・カンパー、ゲオルク・フォルスターに関連したものや、比較解剖学、博物学、旅行記、医学などの1次・2次文献の収集をおこなった。 18世紀ヨーロッパの解剖学者、人類学者、動物学者、博物学者などの肩書きをもつ自然科学者によって確立されつつあった初期文化人類学の実態を把握するために、収集してきた文献を整理しながら、精読による分析を進めた。 そうした分析の成果としては、当時のヨーロッパはやはりかなりの身分社会であるために、アカデミズムの世界もまた、一種の特権階級的な雰囲気を醸成しながら、かれら自身がそうした特殊な階層に属し、学術に従事することも同様の特権的なヘゲモニーを有することにあまり自覚がないことと、非ヨーロッパ世界の住民に対する視点についても同じく、ヨーロッパ人優位の姿勢で、非ヨーロッパ人を低位の人間とするといった差別的な言説が無意識なレベルで散在しているという認識にいたった。 新たな視点としては、ヨーロッパのアカデミズムが国単位のものではなく、都市単位でひとつの学術拠点として成立しており、ドイツにおいても、現在は無名の地方都市であるが、18世紀当時には学術文化都市として勇名をはせて、大きな発言力をもっていたことなどがくわわった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
18世紀ドイツ啓蒙主義に関する予備知識をいくらかあらかじめ有していたのと、ゼメリング、ブルーメンバッハ、カンパー、フォルスターといった、本研究課題で取り扱う自然科学者たちの1次文献や周辺研究については、これまでに申請者は著作があり、それらをうまく拡張する形での本課題のテーマ設定が成功していたのがまず第一の理由であり、第2の理由としては、そのテーマ設定の輪郭がかなり明確であったために、たいした問題も発生することなく進捗したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である26年度には、これまでに収集した文献資料の整理や、内容の精読と理解をこれまでと同様に、まず進めることと、それらの集成や考察といった作業に、本年度前半期は従事する。 それゆえ、後半期には、本研究課題の総決算としての成果をまとめ上げるべく、なんらかの著作物を上梓する方向で進めていく予定である。最終的な結論部は、ゲッティンゲン大学のアカデミズムと、そこに関連する自然科学者たちの私的な人間関係との結託を明確にすることになるだろう。
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次年度の研究費の使用計画 |
近年、ドイツの大学図書館では、著作権の問題がない書籍をデータ化して、WEBで公開する傾向が高くなっているため。 これまでは、入手できない貴重書籍は、高価なリプリントや複写を依頼するのがつねであったが、最近はPCからの印刷と製本のみで済むことも多く、文献入手に関する大幅なコストダウンが可能になったからである。 ドイツの大学図書館による電子書籍化とWEBによって、18世紀のドイツ語文献の収集が比較的安価で入手できるようになったとはいえ、ドイツで出版される専門的なドイツ語学術図書は高価であるゆえ、最終年度にはすべて使用される予定である。
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