研究課題/領域番号 |
24618001
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
阿部 成治 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (50044566)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ドイツ / 人口減少 / 跡地利用 / 土地利用計画 / 住宅建設 |
研究概要 |
計画に沿い、ルール地方6都市を対象に研究を進めている。具体的には、以下のとおりである。 ・本研究の基礎は、ルール6都市における「人口減少まちづくりに関連した新聞記事」である。新たな新聞記事は毎日発生しており、関連があると思われる情報のダウンロード作業を粛々と継続し、この1年間に、約5千件の記事を追加できた。その後、これらの記事を内容により分類整理している。同時に、これまでに蓄積している約5万件の新聞記事の分類をさらに細かくする作業も進めた。とくに、建設活動を住宅関係と非住宅に分けた上で、2010年以降の情報については、住宅情報から高齢者住宅や住宅のない者への施策を、非住宅から工業立地関係を抜き出す作業を終了した。 ・こうして分類した新聞記事のうち、重要と思われる事項について、日本語への翻訳を進めている。まず重要だと思われる最新記事を訳し、それに関連したり、理解するためにポイントとなる過去の記事を遡って訳す、という流れで進めている。 ・これまでに蓄積していた情報から、「跡地利用」(用地リサイクル)の観点から重要な動きを抜き出して分析し、その結果を平成24年度日本建築学会大会学術講演会で発表した。 ・日本建築学会大会での発表に先立ち、発表予定地を中心に、対象6都市を約1週間かけて視察して回った。とくに、1年前にドルトムント・プロジェクトとして完成したばかりのフェニックス湖と、デュイスブルク南部のロジスティクス基地ログポートIIは、産業開発とレクリェーションを結合した模範的な事例であることを確認した。 ・人口と関連が深い住宅建設面で、若年世代の持家化を援助する施策を行っている市が複数あることを確認できたので、来年度の発表を目ざして検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
10年以上前から継続して実施している、ルール地方に関する新聞記事をダウンロードして蓄積する作業は、順調に進んでいる。これまでは年間に約4千件の記事をダウンロードして整理していたが、2012年に発行された新聞記事のダウンロード件数は、全体で5,177件に達した。 記事はドイツ語で書かれているので、内容を十分理解するには、記事全体を日本語に訳すことが望まれる。2012年の記事について日本語への翻訳状況を調べたところ、600件強に達したことがわかった。記事の1割強を翻訳していることになる。これは、過去に蓄積している記事の翻訳より高い比率であり、この1年間、翻訳に力を入れてきた成果でもある。 現地視察は、夏季休暇を利用して1回実施した。本研究に取りかかるまでの蓄積を含めて考えると、ドルトムントについては市内各区の状況について土地勘がほぼ形成されてきつつあると言える。しかし、それ以外の5市については、市中心部の状況はほぼわかってきたものの、まだ訪問したことのない地区がかなり残っている。このため、新聞記事の理解にかなり苦労しているのが実態である。 本研究の核となるポイントのひとつが、「跡地利用」(用地リサイクル)である。この観点から重要な動きをまとめ、平成24年度日本建築学会大会学術講演会で発表できたことは、作業がおおむね順調に進んできていることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の基礎は、インターネットを利用してルール地方6都市のローカルニュースをチェックし、「人口減少時代のまちづくり」に関連があると思われる情報をダウンロードする作業であり、今後もこの作業を粛々と継続する。ダウンロードした情報はドイツ語であるので、重要だと思われる情報を日本語に翻訳する必要がある。昨年は、従来より多数の記事を翻訳したが、翻訳には非常に時間がかかり、件数の増加には限界がある。必ずしも記事内容の全体を翻訳しなくても内容の理解は可能なので、今後は抄訳やメモも活用し、より多くの記事について内容を把握するように工夫を進めたい。 昨年度末から、人口減少対策としての住宅建設施策の状況を、若年世帯の持家取得への援助に焦点をあててまとめる作業を進めている。この作業においても、都市によってかなり個性があることを確認できつつあるので、まとめて平成25年度日本建築学会大会学術講演会で発表を行う予定である。その後は、ルール地方の情報を広く検討する中から、他に分析の重点が何かを考え、都市の個性とその原因を明らかにする作業を進めていきたい。 このように新聞情報収集を進めていると、自分の研究範囲に限らず、日本にも知って理解してほしいと感じる情報に出会うことが時々ある。そこで、この種の情報を発信するため、数年前から「ルール地方よもやま通信」というブログを作成している。ブログによるルール地方の多面的な紹介も、継続して進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費が残っている主因は、パソコンの価格が予想より安く済んだことと、出張を外国出張1回しか行えなかった点にある。とくに、年度後半に記事の整理と翻訳に多くの時間を費やした結果、出張する時間を確保することができなくなった。この結果、旅費の金額を多く設定していたわけではないにもかかわらず、使い切ることができなかった。次年度は、作業全体のバランスを考え、現地の事情把握により力を入れ、今年度以上に出張を実施したい。
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